9.高値がつく

「服を着るのはいやだ。この僕の、泳ぐための肌が、皮膚にしまわれた鱗が、傷付いたらどうする」

「あ、そっか。傷付いたら、売れないよね……」

レンズも思い直して、パールに服を着せるべくつかみかかろうとした手を戻す。それから、裸のパールを連れて、泉から離れようとする。この辺りはめったに人がいないと言っても、さすがに、ヒトガタの生き物は特に、地上に出るには衣服がないと怪しまれるだろう。
ランは、少し考えてから提案した。

「レンズ──幻術でいいから、なにか、服っぽいのを出してやれ」

「あ、そっか。師匠に教わったんだ」

レンズは、納得して、パールに指先を向ける。
光に包まれたパールの体は、やがて白い衣服に包まれる。

「……ほう。これが、人間どもを惑わす光か。なるほど。知性のある生き物を騙すには充分なエネルギーだ」

 真面目に分析しようとしているパールを引き、改めて二人は元いた家へ向かった。

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