神様、もう少しだけ(Milestone:マイルズ様よりコラボ作品)
神様、もう少しだけ
*恋人ナツルー、 港崎みたらしネタ「キス攻防戦in夏祭」
神社の参道に、色とりどりの露店が立ち並ぶ。ルーシィの手を引いて歩きながら、ナツは先程からある獲物を狙っていた。
今だ、と自分から掴み取りにいけば、ぷっくりと熟れた赤い唇の前に、それと同じくらい赤く膨らんだりんご飴。
「……なあ、コレ、邪魔なんだけど」
ナツは機嫌を損ねた声で、りんご飴の向こうのルーシィに言い放った。飴のせいで赤みを増した唇が、小さく声を紡ぐ。
「……ガード」
「何でだよ! “オアズケ”ってやつか?!」
「ちが…ッ! そ、そんなんじゃないけど、」
ナツに唇を狙われていると察したルーシィが、赤い顔で必死に守りに入る。先ほど目に入った赤い唇が、ナツをどうしようもなく惹きつけた。
今すぐにキスをしてあの甘美な唇を味わいたい、という欲望に駆られる。
「じゃあこれどけてくれよ」
「こ、ここ人多いから……恥ずかしい、の」
衝動を抑えきれないままにルーシィに詰め寄ると、彼女は拒否する訳でもなく恥ずかしそうに目を伏せた。ナツの目に映るのは、赤くなって自分のことを考える可愛らしいルーシィ。
夏祭の人混みの中、二人は向かい合ってたくさんの人に押されながら神社の参道に立ち尽くしていた。
(やべえ、ちゅーしたい)
「……分かった」
パッと顔を上げたルーシィの細い手首を、ぎゅっと掴む。
「人がいなけりゃいーんだな! よしあっちの静かなとこ行くぞ」
「?! え、ちょ、ちょっと待って!」
「何だよ、それもダメなのか?」
「だって……心の準備が、まだ」
ルーシィは潤んだ瞳でドキドキしながら、まだ慣れないキスという行為への率直な気持ちを口にした。
「……やっぱ“オアズケ”じゃねえか、ソレ。でも悪ぃ、もう我慢すんの無理そうだ」
「…!」
ぐいっとルーシィの腕を引っ張ると、人混みをすり抜け、静かで人けのない所へ連れ出す。ルーシィは困惑しつつも、おとなしく付いて行くしかなかった。
(キ、キスするんだよね、今から、ナツと。そのために人けのない所に行くなんて、『もう我慢できない』だなんて、ナツってば……)
(キスするために人けの無い所に…って、何か、すげぇアレだな……何してんだオレ)
これからの甘い予感にかぁぁ、と頬が熱くなるルーシィと、急に自分のしてることを振り返って恥ずかしくなるナツ。二人ともドキドキが最高潮に達しながら――数度だけ触れた互いの唇の感触を、じんわりと思い出しながら。
(どうしよう、好き)
(ヤバい、好きだ)
ずんずん歩いていく彼と、それに小走りで引っ張られていく彼女。暗い場所へ近付くにつれて、二人の影が濃く重なっていく。
二人とも顔を赤くして俯きがちになりながら、無言で二人きりになれる場所へと急ぐのだった。
*
誰もいない場所に着くと、ナツはパッと勢いよく後ろを振り返った。
「ここならいいだろ?」
「ま、待って、あたし心の準備がまだ」
「もう待てねえって、オレ言ったよな?」
「あ」
りんご飴が、コトリと音を立てて地面に落ちる。
「ん…っ」
静かな神社の境内に、ちゅ、ちゅ、という音が響く。
(よく自分でもここまで我慢したもんだ。でもここならもう断る理由ねえよな? ルーシィ)
攻防戦の反動か、人けの無い所でルーシィと二人きりになった途端、ナツはがっつくように赤い唇に食らい付いた。呼吸の合間に、ルーシィが苦しそうに喘ぐ。
「だめだよ、ナツ。神様が見てる…っ」
「見せ付けてるから、いーんだよ」
「んぅ…」
(美味え。悪ぃな神様、もう少しだけ)
しばらく無心で貪っていると、ナツの熱に浮かされたか、ルーシィが戸惑いがちに小さく背伸びをした。
華奢な腕が、そっと彼の背中にしがみつく。
心ゆくまで味わい尽くした唇は、甘い甘いりんご飴の味がした。
〔Fin.〕
〇●〇●〇●
「Milestone」のマイルズ様より、
こちらのナツルーを元に、素敵すぎる小説を書いて頂きました。
私の妄想会話文が、ほぼそのままの形で随所に盛り込まれていて嬉しくも恥ずかしい…!
思いもよらぬ初めての妄想会話文と小説のコラボにただひたすら感動しています。私の会話文が素敵ナツルー小説書き様の小説の一部に違和感なく組み込まれてるんですよ!こんなの自慢するしかない!!!(><)
お互いがお互いを「好き」と改めて実感する場面の青春感にやられました。キラキラすぎる。
まいるずさん完全オリジナルの部分の、二人きりになってからのイチャイチャシーンは、いや、エロが過ぎます…がっつくナツとあっぷあっぷなルーシィたまらん…ッ!!
「神様が見てる」ってフレーズの背徳感よ。もう大好き。
Milestone様では私の絵を挿絵として載せて頂いており、まいるずさんの素敵コメントも記載されていますので虚ろ坂のlinkから是非♪
まいるずさん、この度は本当にありがとうございましたー!またコラボしてやって下さい(はーと)
(2016.10.24)
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