ぐしゃり、ぐしゃり。
其処にある残骸を踏みつける。
べしゃり、と血が飛び散る音。
魂の抜けた肉塊など無数にある。

「…安らかに眠れ。」

苦しそうな声、これが己の息子なのかとクラトスは眉根を寄せた。
まるで弔うかのように。
眼の前にあるのは、死した屍。
山賊だった。
襲い掛かってくる山賊を殺さないように倒す事など今のロイド達には難しくて。
コレットを庇おうとした時、ロイドの刃は確かに、山賊の心臓を貫いていた。
刃を引き抜いて、溢れ出す生命の噴水。
真っ赤で、怖いくらい真っ赤で。
ロイドは泣きそうな声で、呟いたのだ。

「お前はこれから先も、全ての命を弔う気か。」

ちん、と鞘に剣を収めてクラトスはロイドに問うた。
その質問の意味を解さなかったのか、ロイドは怪訝そうな瞳でクラトスを見詰めた。

「…如何いう意味だよ。」
「人間を殺す事に罪悪を覚えるのなら、ダイク殿の元へ戻れ。…そう言いたい。」

冷静に、かつ端的に。
そう告げたクラトスに周囲の面々は表情を強張らせた。
ロイドが言い返さないわけが無い。
きっと胸倉を掴んで怒鳴り散らすだろう。
だが、それと裏腹にロイドはクラトスから視線を外し、自分の掌を見詰めて黙り込んでしまった。

「…罪悪を覚えない方が、無理だろ。」

ぽつり、と零れた言葉は随分と弱々しい。
普段なら反論するのに、今の彼の瞳は泣きそうに歪んでいる。

「今殺した奴らが…あと何年生きれたのか、俺は知らない。名前だって知らない。家族がいたかもしれない、愛した人がいて、帰りを待ってる人がいたかもしれないのに…俺たちは、そう言う人たちですら殺さないといけないんだ。」
「なら…」
「解ってるッ!…解ってるんだ、お遊びじゃない。俺たちは、そう言う人たちの生命(いのち)も背負わなくちゃいけないんだ。」

ぐしゃり、肉が潰れる音。
死した屍を弔うその瞳は幼くて。
これから先が思いやられる、そうクラトスは嘆息した。
魂の抜け落ちた肉塊にもう一度魂を与える事は、リフィルですら出来ない。
それを知っているから、ロイドは瞼を閉じて十字を切るように祈った。

「俺の事は赦さなくていい…好きなだけ怨んでくれ。その代わり、ちゃんと成仏してくれ…」

何度目の光景か。
此処まで優しくて愚かしい彼の行動に、それでも自分が毒されている事にクラトスは気付いた。
最初の頃はロイドのその行動にただ憐れんでいただけだった。
それなのに今は。

「…クラトス?」
「私も、随分と甘くなったものだ。」

そう言いながら、屍の元に跪(ひざまず)き黙祷を捧げた。
襲ってきたこの山賊に非がある。
だが、だからと言って命を奪う権限など誰にも無いのだ。
ロイドはそれを知っていたのだろう。

「…お前は優し過ぎる。」
「優しさって、大事だろ。」
「優しさと甘さは違う、覚えておけ。」

今はまだ、親としての忠告は出来なくて。
ただの“仲間”として。
クラトスは天を仰ぎ、静かに目を伏せた。



弔う意味
(その生命を全うするから、人は美しい。)




+++
うわぁ…超暗い。
親子ですらないクラロイって一体何…クラ+ロイ?
シルヴァラント序盤、しいなが仲間になる前。
ロイドくんの「安らかに眠れ…なーんてな!」がインパクト強過ぎて…ついついやってしまった←
そう言えばラタではなーんてな!がなくなったそうですね、やってないから知らないけど。

10-07/17
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