漆黒の闇に覆われた夜。
満天の星空は静かに辺りを照らしている。
窓硝子に仄かに当たって砕けるような光は何処か神秘的で、儚くも美しい。
そんな深い深い夜が始まる頃、クラトスはベッドに浅く腰掛けて夜の闇と同じくらい深い溜め息を吐いた。

「…」

向かい側のベッドに腹を出して眠るロイドを見据えて、溜め息をもう1つ。
深い惰眠を貪る姿は普段の快活な少年と真逆で、幼さを残している。
その姿が忘れかけた14年前の記憶を呼び覚ます。
今よりも小さく、庇護の対象として慈しんでいたあの頃。
無条件に愛しいと思えたあの小さな小さな子供。

「…んー、と…さん…」
「ッ!?」

ロイドの口から零れた言葉に思わず面食らう。
しかし寝返りを打った彼の瞳は固く閉じられていて、また規則正しい寝息が聞こえてくる。

「寝言、か…」

記憶とリンクした寝言に、思わずクラトスは破顔した。
思い起こせば、芋づる式に浮かぶ数々の記憶。
初めて息子を抱いた日、とーさんと呼んでくれた日、妻…アンナと共に眠った日。
全てが次々と浮かび、破裂するように消える。
クラトスはベッドから立ち上がり、ロイドの蹴り落としてしまった毛布を掛けてあげると、僅かに微笑んだように見えた。
上着を脱いだロイドはタンクトップ1枚で、放っておけば恐らく風邪を引いてしまうだろう。
そのままなるべく振動を与えないようにロイドの眠るベッドに腰掛け、少し癖の強い髪の毛を優しく撫でた。
ごわごわではなく、適度に柔らかい髪の毛。
あまり自分の毛質に似ていない。
其処はアンナに似たのだろう、とクラトスが1人で回想に耽ると月光がほんのりと部屋に差し込んだ。
窓に近いベッドに光が降り注ぐと、ロイドを照らした。
光に包まれたかのような姿は、もうすぐ成人を迎えようとする男には見えなかった。

「…ッ!」

クラトスは頭(かぶり)を振る。
自問自答、今自分は何を考えた。
愚か過ぎる思考を振り払う。
この少年は知らないだけで、クラトスは彼の父親だ。
それなのに。
漸く再開した時から惹かれ、苦しい程に想ってしまった。
例えそれが禁忌でも、気付いた時には遅かった。
もう後には戻れない、そんな所まで来てしまったのだ。
幸い、ロイドはこの想いを知らない。
否、知らなくていい。
眠るロイドを見る。
すやすやと幸せそうだ。

「…お休み、ロイド。」

優しく呟いて。
触れるだけ、そう念じながらクラトスは唇を重ねた。
たとえ次に巡り会う朝に私が居なくても、そう胸に抱いて。



夢の中だけでも幸せに
(この愚かしい想いを闇に葬る事が出来れば。)
(しかし、そんな事を思っても全てが無駄なのだ。)





+++
超絶クラ→ロイですが如何すれば^p^
父さんのもやもやと寝てるロイドにちゅーが書きたかっただけです、ただの変質者になりかけてるぞ父さん!!!
因みにシルヴァラントの救いの塔直前かな。
最後の一文だけ凄く切ない物が書きたかったのに最初の方で全力崩壊orz

10-06/06
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