二人の空間




放たれた障子からふわりと、心地の良い空気が入り込んでくる昼時。
私はほんの少しの眠気に襲われながらも、目の前に座る風間さんと対話していた。
「あー..落ち着きますね、この空気」
のんびりとした口調の私を見て風間さんはというと、はっ と鼻で一つ笑いをこぼして、馬鹿にしたような目で私を見た。
「落ち着く?お前は常日頃、危機感など持っておらぬだろう」
明らかに私を馬鹿にしているその態度は、決していいものではない。
が、もうすっかり慣れた私は苛立ちなどほんの少しも感じない。
「そんな事はありません。
常に周りに気を配ってますから」
平然と言った私につまならさを感じたのか、風間さんはほんの少し目を細めて、静かに言った。
「..とてもそうとは思えぬがな」
ちゃぶ台の上の茶を一口啜った風間さんはそれから何も言わず、ほんの数秒、私達の間に言葉は飛び交わなかった。
「何時でも呆けた顔をしているな、お前は」
ふぅ、という小さな一息で破られた沈黙。
「…その呆けた女を嫁にとったのは、どこのどなたですか」
呆れた、とでもいうような口ぶりに少しいじけたように返せば、目の前の人物はばかにしたような顔をくずし、ほんの少し柔らかく笑った。
「なまえの呆けた顔は、嫌いではない」
私の質問に対しての答えにはなっていないが、その笑顔と優しい声色に、私の心は溺れていく。
応えるように笑い返せば、彼はそっぽを向いてしまって。
その様にまた、私はクスリと声をもらした。



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