皐月様へ捧げ物小説@
いつまでも、いつまでも貴方と一緒にいたい。
どんな時でも貴方の温もりを感じていたい。
それは我が儘ですか?
いや、願望だと思いたい。
甘えていたいと言ったら迷惑かな?
【甘えたいんです】
いつもと変わらぬ朝を迎えた夏侯惇。
ゆっくりと瞼を開き見馴れた天井が映る。
夏侯惇は起き上がろうとしたら何かが寝台の中にいる事に気づき、急ぎ身体に掛けていた布を取り払うと夏侯惇の身体に寄り添いながら眠る従弟の姿が映る。
「…妙才?」
何で此処にいるんだ?
昨夜は一人で寝たのはわかるがいつの間にか忍び込んだのであろうか?
夏侯惇は溜め息をついた。
こんな事は初めてではない。
幼い頃、淋しい時や怖い夢を見た時は夏侯惇の寝室に忍び込み一緒に寝ている事があった。
だが、大人になってからはそれは直ったと思ったのだが。
直ってないようだ。
本当に久しぶりに忍び込んだ従弟の顔を見ると安らかな寝顔であるから余計に訳が解らない。
「淵、起きろ!朝だぞ…」
夏侯惇は優しく声を掛けて夏侯淵の身体を揺さぶる。
「う、う〜ん…」
唸るような声を挙げた夏侯淵はゆっくりと目覚めた。
「おはよう…惇兄…」
「ああ、おはよう淵…何故、此処で寝ている?」
夏侯惇は夏侯淵に疑問をなげかける。
夏侯淵は起き上がると身体を伸ばした。
「んん〜、あっ、それはね…惇兄に甘えたかったから」
「はっ?」
「惇兄に甘えたくて仕方ないから久しぶりに忍び込んだんだ…」
夏侯淵はニッコリと笑って夏侯惇の身体に抱き着いてくる。
まるで甘える猫のように擦り寄る姿は可愛いものだ。
「はぁ…お前って奴は…」
「それに久しぶりに惇兄の寝顔も見れて嬉しいよ」
「俺の寝顔を見て喜ぶのはお前だけだ…」
夏侯惇は夏侯淵の言葉を聞いて呆れてしまう。
『甘えたいから忍び込んだ』
予想外な言葉に夏侯惇は夏侯淵を見た。
しかもべったりとくっついて離れない姿に夏侯惇はどうして良いやら解らない始末。
とりあえず、夏侯淵の身体を優しく抱きしめると夏侯淵は嬉しそうに笑う。
余程、嬉しいらしい。
「全く、可愛い事を言うな。襲うぞ…」
「惇兄なら構わないよ…」
「くく…可愛い奴だ…」
夏侯惇は夏侯淵の唇に軽く口づけた。
少しだけ感触を味わいながら夏侯惇の唇は離れた。
「元譲…もっとして…」
「もっとか、本当にどうした。いつもより甘えて?」
「俺ね、元譲が一番大好きだと自覚したんだ…」
「やっと自覚したのか。呆れた奴だ…」
「だから甘えたいんだよ。元譲は俺のもので俺は元譲のものだから」
「まあ、そうなるんだろうな…」
夏侯惇は今の現状にどうして良いやら思考を廻らせていた。
従弟が自分に想いを寄せるのは嬉しい事だ。
想いに気づいたらこんなにも人は変わるのだろうか。
「元譲…好き、大好きだよ」
「妙才、俺もだ…」
「だったらずっとこうして甘えても良いよね?」
「へっ?」
「だから、俺と元譲は恋人同士になるんだろ?だからこうしてべったりと甘えていたいんだけど…」
夏侯惇は夏侯淵の言葉に間の抜けた返事を返す。
夏侯淵は上目遣いでそんな台詞をなげかけながら夏侯惇を見つめる。
そんな姿を見たら抑えていた理性も吹き飛びそうだ。
「妙才…ずっとか?」
「駄目、元譲…?」
夏侯惇は夏侯淵にもう一度尋ねると夏侯淵は瞳をウルウルさせながら呟く。
夏侯惇は生唾をゴクリと飲む。
「お前が気が済むまで甘えればいい…」
「本当に、やったあ〜」
夏侯惇の言葉に夏侯淵は嬉しそうに笑う。
結局は夏侯淵の思惑通りに夏侯惇は折れた。
「元譲…大好きだよ…」
「俺もだ妙才…」
二人はゆっくりと口づけを交わした。
ずっと、ずっと、貴方とこうして甘えていたい。
貴方と一緒にいられる日々がなによりの幸せなんだよ。
夏侯淵は、夏侯惇にべったりと甘える時を過ごしたのであった。
終
後書き
皐月様を励ます為に書かせていただきました。
リクエスト第一弾は惇淵の砂が吐くような甘々な話です。
甘えっ子淵たんのスマイルにイチコロな惇兄です。
淋しいからつい甘えたくなる淵たんは、惇兄の寝室に侵入しては一緒に寝る傾向あり。
そのうち夜這いをしそうですね、うちの淵たん。
まあ、小悪魔で誘い受けが得意なキャラになりつつありますなー。
こんな作品でも読んで元気になってくれれば嬉しいです。
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