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「「四紫炎陣…!!」」



暗部部隊長三人にカカシを加えた四名によって、木ノ葉病院研究棟に結界が張られる。
術者を倒さないと解けない上に、触れると燃えてしまう結界である。
他三人は結界の外側にいるのに対し、カカシだけは結界の内側にいた。


「な…、カカシ!?」

「オレは中に入ってあいつと話をしてみる。ま、効果はないだろうけどね」



まだ中には研究者たちや存命の可能性のある暗部たちがいるため、結界の中に術を放り込むことができない以上、こうする以外に策はなかった。
自分にナルトが止められるとは微塵も思っていないカカシは、ただ名前の帰りを待ち望むだけだった。
何か一つ自分に出来ることと言ったら、ナルトと面と向かって、こんな事件を起こした意図を探ることくらいだ。

ーーーと考えていた矢先、ナルトの方からひょっこり現れた。



「ナルト、お前…」


その声につられてナルトはすっとカカシを見た。
その視線には何も、カカシに対する警戒も親しみも、何も含まれていなかった。
カカシに何を理解してもらおうとか、協力してもらおうとか、そんな関わりがナルトとの間に起こったことがないのだから、今になってそんな冷たい間柄を嘆こうとは思わない。



「珍しく、随分疲れてるじゃないの」

「そりゃ…ダンゾウとやったからな」



肩をわずかに上下させるナルトの頬には返り血が走り、右手は赤く染まっている。
先ほど研究棟の中まで追いかけていった暗部たちはどうなったのか…なんて考えるのを放棄した。
ナルトが一人で出てきた時点で、もともと棟の中にいた研究者たちも含め、死んでいるのかあるいは動けないほどの傷を負っていることは間違い無いのだから。
そんな残虐な事実からは目を背け、普段は服に汚れひとつ付けずに任務を遂行する男が、珍しいな、とカカシは呑気に思ったのだ。
結界の向こう側で待機している者たちはナルトの姿が見えた途端に殺気立ち、カカシに向かって構えろだとか、写輪眼を出せだとか急かしたてるが
カカシにはそれが必要なことなのかどうかも、怪しかった。



「オレはお前を止めなきゃならないんだけど、お前の意図がわからないままじゃやる気が起きなくてね」



本音半分冗談半分で、だが緊張の糸は張り詰めておきながらカカシが言った。
それに全く耳を貸す様子もなく「九曜は?」とナルトは研究室から盗んで来たらしいクナイやら手裏剣をホルスターに補充しながら聞いた。



「九曜を殺すことがお前の目的か?」

「ああ」

「殺した後、どうするつもりだ。里から追放されるぞ」

「ーーー…」



ナルトが忍具の補充を完了させてふと顔を上げたその瞬間に、その目に入ったのは探していた九曜の姿
任務から急遽帰還したらしい九曜は結界の外側に駆けつけたところだった。
その刹那、ナルトの血濡れの右手にみるみる膨れあがるのは螺旋手裏剣
結界をぶっ壊す気だと周りが騒ぐ合間にもそれは放たれ、結界は盛大な爆発音とともに弾け飛んだ。



九曜を殺すために木ノ葉研究棟から飛び出したナルトを誰もが捉えようと、満を持した術を発動させる。
流石に術に術が折り重なる爆心地へ突っ込むわけにはいかず、ナルトは冷静に迂回しようと左に避けたーーーそこへ待ち構えていたのは



「総隊長ッ!!これ一体どういうことですかッ!?」

「待てヤジ!お前んとこの隊長どうかしてんだよ!離れろ!」



ヤジと臣だった。
一目散にナルトへ飛びかかってきたヤジと、そんなヤジの身を庇おうと臣もナルトの腕に掴みかかった。
九曜と同じく彼らも今しがた任務を中断させて帰還したらしい。彼らの背後には因も亀もサスケもいた。



「ヤジ」と、ナルトが呼ぶから、ヤジは声を裏返らせて返事をした。



「オレを止めてみろよ」

「え…」

「オレを慕ってんなら、全力で」


ヤジは言葉が見つからず固まってしまった。
総隊長の命令は絶対
総隊長は、彼自身を止めろと命令したから、オレは総隊長を止めるべきなんだけど
この命令は総隊長としてではなく、彼の素…うずまきナルトによる命令のように聞こえた。
というかそもそも、あのうずまきナルトが総隊長だったこと自体が驚愕すぎて頭がパンクしそうなのに
こんな不可解な命令をされたら固まって当然



「無理なら退け」

「ッ!!」




ヤジの腹に膝蹴りをかましたナルトは、臣の拘束も造作無く払いのけた。
続けざまに因と亀のAランクのコンビ忍術が飛んでくるがそれも風遁で弾き飛ばし、サスケの雷遁もねじ伏せた。
標的である九曜も彼らに負けずナルトへの対抗に数々の忍術を駆使する。
そうして忍術大合戦が繰り広げられる間にも、他の上忍中忍たちはナルトを拘束するための罠を張り、里の避難を完了させ、精力総動員でナルトを囲んだ。


そんな敵陣のど真ん中となった戦況にも関わらず、それを無にするのがナルトである。
血濡れの右手には再び螺旋手裏剣…分裂して五つとなった
同じ里の仲間だろうと関係なく、周りを一気に吹き飛ばす気らしい。
それは瞬く間にナルトの手から勢いよく四方八方へと投げられ、そして投げるなりナルトは一目散に九曜の背後へと瞬身で回り込んだ。


ーーーキィィィン



ナルトのクナイが金属音を立てて何かにぶつかる。
四方に飛んだ螺旋手裏剣は地に浮かぶ呪印によって吸収されるように消滅した。




「助かったよ、紫鏡」

「お役に立てて光栄だよ、銀弥サマ」



九曜へ向けられたナルトのクナイを受け止めたのは、銀弥の純白の刀
そして螺旋手裏剣を五つすべて消滅させたのは紫鏡の呪術だった





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