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「どういう事です…五代目…」
「カカシか…」
窓の外を眺める五代目の背を睨み付ける。
任務から帰還するなり、暗部が完全配備された警備体制を里門諸とも突き破り里抜けを犯す…という目を疑う様な大事件を目の当たりにしたオレは直ぐ様火影邸へ駆け込んだ。
何よりその大事件を起こしたのは二人供オレの大事な部下だ。
「今回のことは私が黙って見送った」
「………あいつ等に、何があったんです…?」
…名前にとって、身を守る為の塞となる筈の木ノ葉を棄てる事は己を危険に晒す事に繋がる。
何か事情があるのだろうが、生憎オレは何も聞かされていない。
そしてナルトまで、何故…。
「…あいつは、元々木ノ葉の人間じゃないだろう…」
「…まさか…」
「御意見番はそこに漬け込んで、サスケを受け入れるという話を断固拒否した」
「!」
思わず耳を疑った。
確かに名前は水の国の生まれで、一度自分の国を棄てている。
だが、あいつが木ノ葉の忍として生きる様になって既に五年。
里一の先鋭戦力を全うする程の忍になったというのに、御意見番は何を考えて…。
「御意見番への対抗策として、名前は里抜けを選んだ」
「何故止めなかったんです…!!」
「…止められなかった。ああするしか、御意見番を黙らせる手段が無かった…」
「………っ、」
まさか、名前が上層部からそんな仕打ちに遭っていたとは。
折角サスケを里に戻って来るよう説得出来たのに、そんな理不尽な理由で……。
(どうして、何にも言ってくれないのよ…あいつ…)
「御意見番が態度を改めれば、直ちに名前は戻ってくる。…それまでは働き詰めになるぞ」
「では、ナルトは…?」
「あいつは知らん!私に何も言わずに行きやがって…」
「…………。」
カカシ先生と綱手様の会話を盗み聞きしながら拳を握り締める。
昨日私に会いに来てくれた男装名君の様子が普段と少し違ったのには気づいてた。
(…まさか、里を抜けちゃうなんて…)
「あと、…カカシの事も頼む」あれは、そういう意味だったんだ。
―――バンッ!!
「!」
「……やっと入ってきたか」
盗み聞きしてた事はバレてたみたいで、二人は驚いた様子もなく私へ目を向けた。
「お前等のことは…………嫌いじゃない」頼ってもらえたと思ってた。
だけど、本当の意味で男装名君に頼ってもらえてない。
あれは一人残される私を気遣って言った言葉…。
「サクラ…、大体の話は聞いただろう。今夜はもう帰りな」
「…五代目、火影様」
「綱手の下で医療忍術を学ぶ気はないか?」男装名君。
私…、男装名君に頼って貰いたい。
護られてるだけじゃ、イヤなのよ。
医療忍者になったら、役に立てるかな。
「綱手様」
「…なんだい」
「私を、弟子にしてください!」
「!」
「医療忍術を、学びたいんです!!」
*****
どんどん成長していく自分の部下。
子供の成長というのは、何より仲間同士の競い合いが鍵となる。
暗部である男装名とナルトの存在はサクラとサスケにとって吉と出るか凶と出るか不安だったが、どうやら心配損だったらしい。
「サークラ」
「!…カカシ先生!」
執務室から出てきたサクラが駆け寄ってくる。
どうやら無事に弟子入りさせて貰えたらしい。
あの男装名がサクラにどんな事を吹き込んだのかは知らないが、サクラは真っ直ぐ上を目指して歩み出した。
決意の表れか、随分逞しく見えたサクラに向かって微笑んだ。
「がんばれよ」
「…えへへ!これでカカシ先生一人になっちゃっいましたね」
「ま、部下の成長は嬉しいもんだからね。思う存分やりなさいよ」
「うん!………カカシ先生」
「?」
話を聞いた限りでは、男装名君はカカシ先生には何も言わずに行っちゃったみたい。
何となく、カカシ先生の表情が(覆面で見えないけど)寂しそうに感じる。
「昨日、男装名君が私の家に来たの」
「…あいつが?」
「うん。でね!カカシ先生のこと、気にしてましたよ、男装名君」
きょとんと目を丸くしたカカシ先生がふっと優しく笑った。
カカシ先生の大きな手が私の頭に乗せられる。
「ありがと、サクラ」
サクラに軽く礼を言って瞬身で上忍待機所近くまで飛ぶ。
…サクラにも気使わせてしまったか。
(先生失格だね、オレ)
「カカシには……感謝、してる…」ま、言葉にしなくてもちゃんと伝わってる。
―――名前、絶対無事で戻って来いよ。
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