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ニコリと笑うカカシ。
確かにそうかもしれない。
三代目の秘匿事項を明かすことに戸惑いはあっても、これが正に三代目の望んだことなら私がすべきことは一つ。
カカシの言う通り、ナルトも名前も多寡には関わらず仲間に対する思いやりは持っている。



「……そうだな」

「でしょ?」



名前の場合、あいつの過去は詳しくは知らないが、見ていても仲間に対する思いやりはナルトよりも断然豊かだ。
心配なのはナルト…。
人間を拒絶し、暗殺の中に存在意義を求めたあいつが、名前と餓鬼の様に口論したり、サスケや仲間の為に音へ走ったり…。
暗殺や人間に対する概念にそう変化はなくとも、周りへの壁は少し低くなったのかもしれない。



「心配させて悪かったな、お前たち。…きちんと説明してやろう。取敢えずサクラ、サスケは無事だよ」

「え…」

「きっと里に戻ってくるさ。大蛇丸をぶっ倒してな」



何だかんだ言って五代目も名前の意見には乗り気らしい。
サクラに向ける清々しい笑みがそれを物語っている。



「戻ってくる、とは?」

「大蛇丸の暗殺任務として、冤罪にしてやるんだよ」

「…つまり、今回のサスケの行動は見過ごすと?」

「そういうこと。それを提案した男装名が自らサスケにその主旨を伝えるのが今回の任務の真の目的」



にっこりと笑った五代目が恐らく名前の報告書であろう紙をバッと広げる。



「サスケは大蛇丸を仕留めたら帰ってくるとさ。男装名からの報告があった!」

「……―――やったあッ!」



いのと抱き合うサクラ。
勿論上忍のお二人は未だ疑念を含んだ視線を送る。



「何故」



そう、うちはイタチへの復讐の為力を求めて音へ走ったサスケが、大蛇丸を仕留めた後何故木ノ葉に態々戻ってくるのか…。
大蛇丸を凌ぐだけの実力を身に付けたのなら、もう木ノ葉に用は無い筈だ。



「木ノ葉の暗部に入れてやるのさ。そこで槍刃と銀弥の下に付ける」

「!?」

「実力を付けるのに申し分ない境遇だろう?」



今の時点でサスケを暗部に入れることは命の危険を考えてオレも名前も却下した。
だが木ノ葉に戻ってきた時点では何の問題もないだろう、大蛇丸を凌ぐ実力を持つなら暗部の仕事くらいそつなくこなせる筈だ。
“槍刃”と“銀弥”の名前を耳にした途端に顔色を変えた二人に覆面の下で小さく笑う。



「そ、そんなことが可能なんですか?」

「何より本人達から申し出があったんだ、問題ない」

「槍刃と銀弥からですか?」

「そうだよ」



サスケも馬鹿じゃない。
槍刃や銀弥に修行を見てもらえるなら、周りの目なんか一寸も気にせず里に戻ってくるだろう。
“大蛇丸よりも上がいる”これだけでサスケの世界観は断然違ったものになる。



「今も二人がシカマル率いる小隊に付いている」

「!」

「わかっただろう?音忍なんか目じゃないんだよ」



驚きで口をポカンと開けるアスマと紅を見つめていると、ふと窓の外に気配を感じて目をやる。



―――ドサッ



「っ!…痛ぇだろーがッ!怪我してるっつってんだよ!」

「悪いってばよ」



突如窓から飛び込んできたのはナルトとキバ。
床に叩きつけるように担いでいたキバを落としたナルトが笑顔で謝っている。
(アレは素だな…)
続いてネジ、チョウジと入ってきて三人一列に並んだ。
駆け寄りかけた紅も、キバの元気な姿に安堵した様子でアスマの隣に整列し直す。



「……綱手、なんでこんなに人がいんの」



窓枠に足を掛けたまま五代目を睨む男装名。
無傷ではないようだが、元気そうで安堵した。



「皆サスケやこいつ等を心配して集まったんだよ。何か問題あるかい」

「まさか」



それを言われてしまっては何も言えない。
きっとアスマも紅もこいつらも、酷く心配するだろうことは承知の上での行動だった。
綱手も、こいつらを諭すのに手間取ったに違いない。



「誰かサンがこんな無茶なこと考えちまったお陰で、こんなに沢山の人間に心配かけて…」



態とらしく俺をチラ見しながら意気揚々と大口開けて語りだす綱手に内心焦る。
この案は俺じゃなく、綱手が考案したことにすると決めた筈…。



「しかも生意気な誰かサンも手を貸すなんて言い出しやがるし」



ナルトも予想外に違いない。
微かにピリッとした殺気が肌に刺さった。



「全部洗いざらい話してもらうしかないねぇ、ナルト、男装名」

「……綱手サマ…?」

「…急に何だってばよ、ばあちゃん」



全部洗いざらい?
まさか、そんなわけ…
心の中でハハハと笑いながらカカシを見ると…目を逸らされた。
おいおい待てよ。



「綱手様!洗いざらい話すって、何のことですか?」



いのが元気良く挙手して尋ねる。
その答えは聞きたくない。
だってまさか……





「ふふふ、それはねぇ………




…この二人が一年前から請け負っている任務についてだ」








ここにきて素性を明かすなんて、考えてもみなかったから。





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