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シカマルが告げた班構成に、いのが隣で文句を言っている。
カカシ班がナルト、シノ、いの。
紅班がサクラ、キバ、シカマル。
アスマ班が俺、サスケ、ヒナタ、チョウジ。
余りのいのの嫌がり様にナルトが怒りだした。
これではシノが気の毒だ。



「シカマルまでわたしを見捨てたのね…!」

「…んな訳ねーだろ。ったくクソめんどくせー」

「何でんなに嫌がるんだってばよ!確かにシノは地味だけど、オレがいんじゃねーか!」

「あんたがいるから余計嫌なのよ!」

「え!?」



ギャーギャーと騒ぎながら里門で手続きを済ませ、里を出る。
綱手のお陰で、恐らく今までで最も安定した生活を送っている。
銀弥としての任務も下忍としての任務も偏ることなく遂行している上、背に霞尢が居ない事が何よりも楽だ。
それに、これからは烈火もいる。



「おお男装名ー!よかった!ナイスタイミング!」

「?」



遠くの方から男装名の名前を叫びながら走り寄ってくる男。
あいつは確か昨日会った、烈火とかいう男装名の知り合いだ。
サクラによれば兄弟のような関係だと言う。
あ、昨日の…と呟くサクラに昨日ぶりだな、とにこやかに手を振るジャラジャラと髪やら耳やら首やら服に飾りをぶら下げた赤髪の男。



「なに、俺任務中なんだけど」

「銀鳥貸して欲しいんだ!隣街まで買い出しに行きたくてさァ!あいつがいれば速ぇだろー?」

「………………。」



…………銀鳥って、あの銀鳥君だよね。
そんなに大っぴらに公言しても良いのかと男装名を見れば案の定固まっていた。
ああ、やっぱりね。



―――ガシッ

「ぐはっ…!」

「昨日俺の話聞いてたか…?言動を慎めって言ってんだよ!ぶっ殺すぞ糞が…!」


胸ぐらを掴み上げ、睨みと殺気で脅す男装名。
焦りを必死に抑えている様子が見てとれて、思わず少し笑ってしまった。
態々オレには地下の籠りにまで行って話した事柄をこんな道端で叫ばれたんだから無理もない。



「ぐへっ!」

「あいつは貸せねぇ。俺がいない間は大人しく留守番しとけ」

「ハイ」



シュビっと敬礼してそそくさと走り去った烈火。
余程ビビったらしい。
……ていうか留守番?
暫く帰らないからってナニ?



「一緒に住んでるの?」

「ああ」



…あの男が、ね。
別にオレは名前に対して恋愛感情を抱いてるわけでは無い。
しかし独占欲は認めざるを得ない程に抱いてしまう。
心を閉ざしていた名前がオレにあの籠りで話してくれた真実。
本当の名前を呼ぶことを許されたこの優越感。
これが今ではオレだけじゃなく、自来也様やナルト、あの烈火という少年にまで許されている。
徐々に広がっていく名前の世界を嬉しく思う反面、オレを特別に頼って欲しいという独占欲に繋がった。
こんな餓鬼みたいな一面が自分にあったのだと自分でも驚いたくらいだ。



「じゃあ、烈火君の方がお兄さん?」

「…そう見えるか?」



サクラが尋ねるとムッと眉間を寄せた男装名。



「ちょっとだけね。背も烈火君の方が高いし…烈火君って何歳なの?」

「…………十五、か」

「二歳差ねー!男装名君が弟かあ…」



弟という単語に更に気に入らない様子。
だけど一瞬、少し困ったように優しく笑った男装名。
男の姿をしていても感じる可愛らしく素直なその表情に思わずドキッとしてしまい、視線を逸らすとその先に…オレ同様男装名を見つめるナルトがいた。
意外だなーとそんなナルトを見つめているとオレの視線に気付いたらしく目が合った。



「……何か」

「いえ、何も」



口調が素になっている辺り、些かオレの態度が気に障ってしまったようだ。
眉を寄せて黙々と足を進める若干十二歳のナルトが恐ろしい。
名前とはある程度の信頼関係を積んできたと思っている。
だからあの銀弥といえど、恐怖を感じることは無くなった……が、ナルトは違う。
今まで築いてきたナルトとの信頼は架空のものであって、オレは真のナルトを知らない。
冴として関わってきた槍刃の残虐さや惨さが先に立ち、本当のナルトを見つめようと試みるオレの目を霞ませる。



「んー、この中だとやっぱり男装名君が一番お兄さんに見えるかなあ」

「そうねー。サスケ君も大人っぽいんだけど…、」

「なあなあ!オレは?オレは?」

「あんたはまだ餓鬼」

「うえええ!」



三代目がオレに託した頼み。

“あの子に人間らしい心を”

それは男装名だけではなく、きっとナルトにも必要なこと。
偽ることに慣れすぎた、最愛なる師匠の忘れ形見であるこの子にも。





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