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槍刃と銀弥が共同任務を終えてから早二日が経った。
ちなみにあの任務の勝敗はといえば、ほぼ同時に標的に辿り着いた二人が共に術をぶちまけた為、標的の身体が跡形もなく吹き飛んでしまいどちらの術が先に標的を射止めたのか解らず終いになってしまったということで、―――所謂引き分けである。
勿論そんなあやふやな結果に両者が納得するわけもなく
任務達成後に少々刀を交えた口論となったが、もう二度と一緒に任務に就くことも無いだろうし今回の勝負については背反したままでいいか、という結論で終わった。
元々任務に一緒に出たのが間違いだったのだ。
三代目の言う“よき理解者”なんて遥か彼方の夢の話になっている。




そして昨夜…綱手に不審な動きが見られ尾行していたところ、遂に大蛇丸を突き止めることができた。



「……。」



今まさに綱手が交渉を断り戦闘を初めてしまった様子を陰から偵察中である。
大蛇丸と綱手、それからどこかで見た事がある眼鏡の男とシズネが対峙を組む中、紫鏡は一人のほほんと戦闘を観察している。
…ここで出ていけば俺の相手は確実に紫鏡である。
(―――勝ち目無ぇよ…)
伝令を送ったのだが、自来也様とナルトの奴はどこで何をやっているのか。
そう心の中で嘆いた丁度その時、



「よォ」



ナルトが俺の後ろへと姿を現した。
呑気な掛け声とは対照的に、完璧なまでの見事な抜き足だ。
内心ほっとしたのも束の間、ほぼ同じくして参戦した自来也様の足のフラつき様を見て一気に不安になった。



「自来也様、何かあったのか…」

「綱手に毒を盛られたらしい。多分今日ここで死ぬな、あいつ」



うんざりした様子であっさりと吐き捨てたナルト。
確かに…仲間内に毒を盛られるなんて忍としてあり得ない失態だ。



「自来也が殺られたときは、仕方ねーし参戦するかな」

「…それまで手出さないつもりか?」

「お前は行って来れば。丁度一人手空いてるみてぇだし」



そういってナルトが一瞥したのはもちろん紫鏡。
俺は内心冷や汗を掻きつつ頬を引き攣らせる。
あの男と“一対一”という絶望的な状況だけは何としても避けたい。



「…あの眼鏡は?…確か中忍試験で…」

「薬師カブト、医療忍者だ。中忍試験中にカカシとも交戦したらしい」

「!」



あいつも大蛇丸絡みで色々あったらしい。



「…………。」



一通り状況は整理できた。
そっと遠くに佇む紫鏡を見据え、この状況を打破する手立てを思索する。

まず紫鏡との戦闘になれば俺は負ける。
あいつの呪術は俺の身体を操るのだ。自信を持って勝ち目がないと断言できる。
そしてあいつの目当ては俺だ。

要は…あいつの興味を俺から他へ移せばいい。



「……」



そっと隣のナルトをチラ見する。
―――俺の中にある作戦が浮かんだ。





***





「ふふ…大方綱手に毒でも盛られたんでしょう?相変わらずのバカね」



綱手との戦闘の手を止めて、自来也様を馬鹿にする大蛇丸。
睨み合うカブトとシズネ。
隅に腰掛け傍観を決め込む紫鏡。
そして陰から様子を窺うナルトと男装名。



「…でもまあ…」



ニヤリと嫌な笑みを浮かべた大蛇丸が、突如この状況を一変させた。



「わざわざ私の前に銀色の子を連れてきてくれたことには、感謝するわ」

「!」




気配を完全に絶っていた筈なのだが
いとも簡単に言い当てられた事に顔を顰める男装名。
すぐ隣に控えていたナルトも舌を打つ。
これ以上隠れていても仕方が無い―――。


―――ザッ


ナルトと男装名、二人揃って自来也の前に瞬身で降り立てば、大蛇丸は満足気に笑みを浮かべ、好奇の視線を向けた。



「銀色の…って、バレてんのかよお前」

「…不可抗力だ」



どうやって俺が銀弥だという情報を仕入れたのかは解らない侭なのだ。
互いに大蛇丸を見据えたまま言葉を交わす。



「サスケくんはいないのね、残念…」

「悪いな、気が利かなくて」

「いいえ、男装名くんは悪くないの。ただナルトくん、あなたは場違いよ。帰った方がいいわ…」



諧謔を交えるつもりで返せば、ナルトにそう言い放つ大蛇丸。
どうやらナルトが槍刃である事は未だバレていないらしい。



「へっ…、あんまり図に乗るなってばよ」



隠す気があるのか無いのか、口調とは裏腹に冷たい殺気を大蛇丸に向けてぶつける隣のナルト。
その凶変ぶりに大蛇丸とカブトが僅かに驚くのが見てとれた。



「…ふふ、随分な殺気を出すのね。前に会ったときは可愛かったのに」

「三代目の爺が死んで気が変わったんだってばよ」



ニヤリと笑うナルト。
…隠す気ねぇなこれ。
今の状況で下忍のフリを突き通されても困るけど。



「あら、サスケくんも良いけど、あなたも中々良いわね。…ねぇ?紫鏡、どう思う?」

「………………。」

「…紫鏡?」



大蛇丸の呼びかけに反応を返さなかった紫鏡に皆が目を向ける。
俺も恐る恐る紫鏡へと目を向ければバッチリ目があって、途端に目を細められた。



「また変化してるね?態々左腕に細工してあげたのに」

「……。」



紫鏡が不機嫌そうに言う。

恐怖に震えそうになる掌を握り締め
冷静を繕って、俺は紫鏡を見据えた。






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