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晃が落ち込んでから、約半時(約1時間)。


今晃が居るのは、晃の部屋の目の前の縁側。

彼は縁側に座るのが大好きなのだ。

ちなみに、晃の部屋は総司と斉藤の部屋の隣だ。
最も、斉藤は江戸に出かけている為に今は居ないのだが。





「晃!!
 こんな所に居たんですか!
 まったく、いつまで落ち込んでいるつもりですか?」



「…なんだよったく。」

鋭い眼力で総司をギロっと睨みつける。
総司がその目を見た瞬間に体が痙攣し、無意識に一歩後ずさった。

そんなに神谷を弟に向かえたかったとは。


「あ…いや、そんな怖い顔しなくたっていいじゃないですか……?」

総司の隣には神谷も居るのだが、神谷もビビって総司の後ろへ回っている。


「――総司!!」
「はっはい?!」
「お前―――」
「は、はい………。」


今度は何を言われるのかと、総司はビクビクしながら次の言葉を待つ。



「―――そういえばお前、皆の紹介は済んだか?」
「……はい?」

怒鳴られるかと思った総司はどんどん小さくなっていったのだが、晃の言葉で元の大きさに戻った。

「あ、あの…。晃?」
「なに!」

またしても大声を出した晃に、また一歩後ずさる総司。

「あの…怒ってます?」
「…怒ってない。でも気に食わん。
 ―――でも、私でもどうしようもできないんだよなー。
 一応土方さんの命令だし。総司に当たっても何にもなんねぇし。」


まだ怒っていたのかという感情と、案外立ち直りの早かった晃が意外だったという感情で、言葉に詰まる。


「――で?」
「はい?」
「質問の答え!!皆の紹介は終わったのか?」
「ぅ…あー。
 まだ芹沢先生の所が……挨拶あいさつに行ってない…みたいな?」

未だにビビって腰が引けている総司が面白いと思っていた晃は、そこで耐え切れずに吹き出してしまう。

「ぷっ。あははははっ!
 総司ー!何お前引いてんだよーー!」


それで阿呆ヅラをした時の総司の顔がとても面白くって、また笑ってしまう。




暫くして笑うのを止めた晃は、笑いのせいで出た涙を拭きながら、今度は神谷に話しをした。

「神谷さん。神谷さんのお父上は、何を営んでらしたんですか?」

なんの脈絡もないと不思議に思いながらも神谷は答えた。

「商人です。医者をしておりました。」
「商人ですかぁ。
 いいですねぇ。私からしてみれば…いや、多分総司もかな?神谷さんが羨ましいですよ。」
「え…、何故です?」
「私も総司も、物凄く貧乏な家だったんですよ。
 だから、剣術を習いたくったってお金が無くて、竹刀一本でさえも買えなかったんですよ。」


言葉とは逆に、物凄く笑顔で話している の意図が、神谷にはどうしても分からない。

その時、総司には見えた。
晃が、何か情報を掴んだのだ。
目付きが一瞬だが笑っていないような、そんな気がした。



「さぁて、芹沢先生の所にでも挨拶に行きますか♪」

総司にはあからさまわざととしか思えない逸らし方をして、晃は神谷を連れて行ってしまった。
勿論、それにはきちっとした裏の理由があるのだが、総司に分かるようにわざとヘタな連れ出し方をした。







「えっと、こちらが局長の芹沢鴨先生と、副長の新見先生。以下副長助勤3名の皆さんです。」


総司がにこやかに説明をする。晃もニコニコしている。
――が、神谷だけは目の前の光景に対して眉間にシワを寄せ、冷汗まで掻いている。


「おお、待っとったぞ神谷!
 こっちへ来て酌をせい!!」

既にどんちゃん騒ぎをして酒臭い芹沢が神谷を手招きした。

「えー、酷いなぁ芹沢先生。
 お酒のお供はいつも私がって言ってるのに!」

芹沢の目の前にストンと座って胡坐を掻いた総司。

「いえ!!駄目です!!
 お酌は私がやります芹沢先生〜v」

総司を突き飛ばして芹沢の隣にくっついた 。

「いやどす芹沢先生。
 浮気やなんて、イ・ケ・ズv」

ツンと芹沢を突付いて、総司がまた近づいてきた。
そして、みんなでキャアキャアと騒ぎ始めた。
晃と総司は酒を飲みながら芹沢の取り合いをしている。
そんな光景を見ていた神谷は目に涙を溜めて、「見損ないましたよ!沖田先生も月村先生も!!」と言って飛び出して行ってしまった。


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