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晃が豆鉄砲を気絶させてから、約一刻(約30分)経った。





「……あれ?私は…。」

どうしてここに居るのだろうとでも言いたそうに、豆鉄砲は悩んだ。


「あ、起きましたか!!良かった〜!!」

晃はすぐさま豆鉄砲の下へすっ飛んで来た。


…と言うのも、今の今まで、土方にやり過ぎだと怒られていたから、逃げ出してきたのだ。

土方に怒られている間、近藤は土方を止めようにも止められずにおろおろし、総司は2人のやりとりを近藤の隣に座ってニコニコと楽しそうに眺めていたから、総司の態度には少しイラっとしていた。
だからこの少年が起きてくれたのは、他にない救いの手だったのである。





そして、今は縁側ではなく、近くの部屋に居る。

豆鉄砲が倒れて少したった後、近藤が部屋に入れようと言ったのだ。




「本当に申し訳ありませんでした!手加減したつもりだったんですけど、つい…。」
「いいえ!そんな、大丈夫です。そんなに謝らないで下さい!!」


そこへ総司がやって来て、晃についての事を軽く豆鉄砲に言う。

「晃は凄く力が強いんですよ。
 見た目がこれでも、天然理心流の免許皆伝者だし、その上飛天御剣流の全ての技を使いこなせるんです。
 私もあの技を初めて見た時は本当に驚きましたよ。」


ハハハと笑いながら総司は言うが、豆鉄砲は眉間にシワを寄せて考え事をしている。
そんなに何を考えているのかと思い、晃と総司はじっと豆鉄砲のその様子を見た。
         すると突然、豆鉄砲は「ああ!!」と大きい声を出した。


突然大声を出した豆鉄砲に驚きつつも「どうしたんですか?」と聞くと、彼は何故かワナワナと震えていた。
怖がって震えている訳ではなく、ただ単に驚いているだけのようだ。


すると晃の方へ身を乗り出して、信じられないとでも言うように声を上げた。

「ひ、飛天御剣流って…!
 最強の剣術で、幻とも言われている、あの……、あの飛天御剣流ですか?!」
「はい。そうですよ。」

語尾にハートマークが付きそうな感じでニコニコと晃は返事をした。

「その証拠として、飛天御剣流は”天まで飛ぶ”と書いて飛天だからな。君もさっき見ただろう?
 あの人間技とは思えない程晃が空高く飛んでいたのを。
 トシなんか飛天を見た途端に腰を抜かした程だ。なあトシ!!」


近藤が晃達の方へ近寄ったと思ったら話を振られ、土方は途端に顔が真っ赤になり、うるせえ!と他の方に顔を向けた。
晃にとっては可愛らしいことこの上ないのだが、本人は怒っているようだ。



そしてまた、土方の事が大好きな総司が土方をおちょくる。

「顔真っ赤ですよ〜土方さ〜ん」

そしてまた晃と総司は2人でゲラゲラと笑い出す。
これもまたいつもの日常だ。


晃は、いろんな事をしながら頭の中ではもう1つ別の事を考えていた。

(この子どっかで……?)

それを聞こうと口を開こうとすると、総司に先を越された。


「時に付かぬ事をお尋ねしますが、以前どこかでお会いしませんでしたか?」
「あ、それ、私も今聞こうと思ってたんですよ。」

晃も言うと、豆鉄砲は目を逸らして答えた。

「いっいえ!1度も!!」
「そうですか…。」と総司は言うが、晃には思い当たる人物が居た。

しかしそれが本当だとすればこの少年の命が危なくなるため、わざとここで問う事はせずに話しを逸らした。

「あ、分かった!!
 ほら、この間原田さん達に借りた春画本に良く似た人がいたじゃん総司!!」
「しゅ…っ?!」

豆鉄砲は”春画本”という言葉に反応して真っ赤になる。
”春画本”は今で言う”エロ本”のような物である。普通の反応だ。


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