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―――その日の夜。



「だめですよ芹沢先生っ!!これのどこが巡察ですか!?」
「よいではないか!斉藤が無事に戻った祝いじゃ!!」
「――でも、斉藤さんが帰郷したくらいで怪我なんかする事はまず無いでしょうよ。
 ねぇ斉藤さんv?」


芹沢はとてもご機嫌。

総司は芹沢にダメだと言っている。


――が、対して晃は斉藤が戻ってきてくれて嬉しいのなんの。

神谷も居るがどうしようもできず、沖田のみが悪戦苦闘している状態だ。



――と言うのも、ほんの半時か小半時程前の事。
斉藤・沖田・神谷に月村の4人で話している時。

芹沢の一言でこの状況になった。



「おぬし等もう馴染んでおるのか!!
 では皆で巡察に参ろう!!」

(…芹沢先生の巡察と言ったら……ねぇ?
 女遊びか……飲みに行く?)




――そして、


「結局こうなるのか。」


女遊びでは無かったが、飲みに来たのだ。
しかも店の主人を脅して無料(タダ)。

だから壬生浪士組は嫌われるのだ。
嫌われる原因はほぼこの人にある。


けれど―――



「なんか嫌いになれないんだよなぁ、芹沢先生って。」
「ん?月村何か言ったか?」
「いえ、何もv」





「なぁご主人。
 我等が命をかけて京みやこの治安を守っているのは誰の為かな?」

「へ、へぇ。いつもご苦労はんどす。」


――でも、やっぱり脅している事に変わりはない。




「だめですよ。
 これじゃあ尊攘浪士の押し借りと一緒じゃないですか!」
「そうですよ。それに、やっぱり武士は渡すべき物は渡した方が格好いいですよv」
「うむ……そうか?しかし、今は金が無いから致し方ないのじゃ。
 まぁいい、飲みに参ろう!」




「…ダメだなこりゃ。」
「これはどうしたらいいんでしょうかね?晃……。」
「とりあえず、ご主人のところに謝罪に行かなくては…。」
「はぁ…。ですね。」




謝罪が終わり、皆の下へ行くと、そこには酒を飲んでいる芹沢と斉藤の姿が。


「――”切腹裃”の色ですな。」


――どうやら、隊服の話しをしているようだ。



――この隊服、実は全て芹沢が決めたもの。

江戸っ子は普通この色をダサいと嫌がるが、これには芹沢ならではの意味が込められている。

『切腹裃。
 赤穂義士達が切腹に望んで着用したのが、この浅葱色の切腹裃。
 芹沢曰く、【武士たる者 忠義に生きるは当然 忠義に死する覚悟をも忘るべからず】』

だそうだ。


こういう芹沢の性格が格好いいと晃に思わせるのか――。



これには神谷も芹沢に感心し、見直したようだ。

俯いて顔を赤くしながら考え事をしているのが見えた。






―――その日の夜中、斉藤が真夜中にこっそりと帳簿を見るという仲間にしては不可思議な事が起こったが、数日後。
壬生浪士組にとって喜ばしい事がある。




「すっげぇぇぇえええーーーーっ!!
 ひとり3両だぜ3両!!
 この先毎月!!」


当時は3両は半端ない大金だ。
1両2分あれば、長屋住まいの家族5人がひと月暮らせる程。

今まで貧乏生活をしていた壬生浪士組にはとても大きな喜びなのである。




そして、皆が一番に考える事と言えば…。


神谷は賄い。

晃と総司はお菓子。


――そして他の者達は――




「行くぜ女を買いにっ!!」


・・・これだけである。



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