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―――時は幕末 文久3年―――

物語はここから始まる―――――




「おりゃー!!」

「だぁー!!」

「きぇぇえ!!」





場所は京都。

京都守護職 松平肥後守御預 壬生浪士組宿所


本日、壬生浪士組入隊考試



3人の男が考試の様子を見ている。

いや、1人は男装した女子おなごだ。
名を月村晃。
この物語の主人公である。
飛天御剣流ひてんみつるぎりゅうの免許皆伝まではないものの、その腕をもち、天然理心流の免許皆伝者。

神速の飛天御剣流よりも、更に早い脚力を持ち、脚の速さならばそこらの男に負けることはまずない。

外見は美青年で、総髪。前髪もある。
身長は5尺5寸程度(165cmくらい?)はあるはず。



そして、以外の男2人は、1人は軽く微笑みを浮かばせた美青年、土方歳三。
天然理心流の目録を持っている。
 
もう1人は、少し色黒でヒラメ顔っぽいが、天然理心流の免許皆伝者で、名を沖田総司。
晃と互角程度の剣豪である。





「そろそろ区切りますか、土方さん。」

総司が言うと、土方が返事をした。

「どうだ、総司、晃。新入隊士としてめぼしい者はいるか?」
「そうですねぇ。あの大きい人。……それと今面を打った左の人。」
「その隣もなかなかの腕じゃないですか?」

総司に続いて晃が言う。


そして、「あと、あのちっちゃい人!!」と総司が言った。
総司が言いたい人物が分かっていないようである土方に、晃は「あの人ですよ」と言って指を指した。


「技は無いけど度胸がいい。それにやたらとすばしっこいし、なんだかんだまだ1本も取られてないんですよ。」

総司が説明すると、晃が土方をからかった。

「土方さんでも分からない時っていうのは、やっぱりあるものですねぇ。」
「いってぇ!!酷いじゃないですか、土方さん!
 総司だって今笑ってたじゃないですか!!」

晃と総司が笑い出したのを見て、「うるせぇ」と言いつつ、なぜか晃にだけ拳骨を一発お見舞いした土方。
それを見て総司は暢気にケラケラと笑った。






その時、計ったのかと思われるほどに良いタイミングで、出かけていた近藤と芹沢一派が帰ってきた。

「遅くなってすまん!!」

近藤が謝りながら駆けてくると、土方が微笑みながら考試の状況を簡単に説明した。

「おお、近藤さん!とりあえず4人残して沖田やや藤堂達に立ち合わせています。




「――なるほど。熱心だのぅ、近藤氏は。言うてくれれば途中分かれて酒のひとつも飲みに行ったものを。
 のぅ新見。」

鉄扇で仰ぎながら、太った近藤以外のもう一人の局長、芹沢鴨が言った。
その態度に土方が意見する。

「芹沢先生。昼日中からおつつしみくだされ!
 新入隊士の選抜は我らが壬生浪士組の未来を左右する大事でござる。
 心してあたられるよう、お頼み存ずる。」


しかし芹沢は土方を挑発するような事を言って返す。

「口やかましいのぅ、土方君は。まるで小舅こじゅうとのようじゃ。」
「なんだとこのデブ………ッ!!」

芹沢の発言に切れた土方は芹沢に掴みかかろうとするが、近藤に抑えられる。
だが心配する必要はない。日常茶飯事のことだ。



すると、丁度いい所に今度は総司がやってきた。

「みなさん、面白い事になってますよ。」
「――あの豆鉄砲が勝ち抜いているのか?」

土方とは離れた、藤堂とその豆鉄砲というすばしっこい人が試合っているのを近くで見ていた晃が、土方の発言に思わず笑う。
まあ、その理由は豆鉄砲を見ていれば分かるのだが。

晃は耳もかなりいいのだ。
因みに目は普通の視力だが、暗い所ではこれまた目が利いてしまう。
壬生の狼と呼ばれているこの浪士隊の中でも、一番『狼』という一文字が似合う人物なのだ。

 

――と、話しは戻り。


「いえ、打たれまくっているんですが、一向にめげなくて。藤堂さんがすっかり面白がっているんですよ。」

藤堂はめげずに何度も立ち向かってくる豆鉄砲を楽しそうに相手をしている。
晃もそれを微笑ましく見ていたが、土方がに言った事によってこの後豆鉄砲は反撃ができない結果となる。


「晃。」
「はい?何でしょう土方さん。」
「あいつに一本……そうだな、龍槌閃りゅうついせんでも食らわしてやれ。」
「伸びちゃいますよ?!晃の技なんか繰り出したら。」

総司が驚いて言うと、土方は「大丈夫だからやってみろ。」と他人事のように言った。
実際人事ではあるのだが、彼の一撃は半端なく痛い。


「…まぁ、一応やってみます。」

何の為に食らわせるのかと疑問に思いつつも、それに従った。
藤堂の所まで来た晃は、「すいません藤堂さん。土方さんが一発食らわしてやれと言うもので。」と言って竹刀を構えた。
――いや、構えた、ではない。
竹刀の先を地面につけたまま立つという、リラックスした格好である。
相手になんと失礼な事か。


「さあ、私を倒すくらいの気持ちで掛かって来なさい。」

微笑みを浮かばせながら言うと、豆鉄砲は有無を言わずに掛かって来た。

「どりゃあーー!!」

しかし竹刀を振り下ろしたかと思うと、晃の姿はそこにはなく、後ろを振り返っても姿は無い。


 
「――――あれ?!」

姿を探していると、頭上から声がした。


「飛天御剣流閃(ひてんみつるぎりゅう)―――」

はっとして上を向くと、空高い位置に晃の姿はあり、豆鉄砲には成す術が無い。
というよりは、驚きすぎて声も出ないと言った方が正しいだろう。


すると、晃は重力に従って落ちてきた。

「龍槌閃(りゅうついせん)!!」

晃の竹刀は、見事豆鉄砲の肩に当たった。


「〜〜〜っ!!」

一度倒れこむものの、また起き上がってこようとする。
手加減をしたとは言え、上から降ってきた人間の体重と重力を合わせたくらいの力があった筈なのに、とんでもない気力だ。



―――しかし、コテっと倒れて気絶してしまった。

辺りが一気に静まり返る。
いくらが手加減したとは言いえ、やはり空高くから落ちてきた衝撃は恐ろしい程強い。



――と、豆鉄砲が倒れた瞬間、晃は豆鉄砲の方へと駆け寄り。

「み、水!!
 藤堂さん、すいませんが水をお願いします!!」

そう藤堂に告げ、は気絶している豆鉄砲を抱えて縁側へと連れて行った。

「そ、総司!手伝え!!」

晃は焦りながら総司を荒っぽく呼ぶと、防具を取るのを手伝わせる。
そこへ土方達がやってくると、土方は何の迷いもなくの頭上に拳骨を陥れた。


「バカかお前は!いくらなんでもやりすぎだ!!」
「いてっ……はい、反省してます。」

晃も一応反省しているのか、声が小さかった。
が、晃にだって言い返したい事がある。


「でも、土方さんだっていいからやってみろって――――?!」

喋りながら豆鉄砲の面を取った。



―――すると

「何と美しい若衆じゃ…。」と芹沢は言い、

「まだ童じゃねぇか。」と土方は言う。

他の人達も豆鉄砲に見入った。


そして晃は驚きで声も出ない。




それもそのはず。
その豆鉄砲は整った顔立ちで、少し大きな目。

華がとても似合いそうな美少年だったのだ。


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