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―――それから一時ほど後―――



晃、総司、神谷の3人は芹沢の巡察に――と言うよりは、酒を飲みに――着いて行く事になった。

――が、早々に一派を見失った為に探していた。だが、やはりいつも通り町の人達は自分達を白い目で見ている――



「壬生狼やで」
「しっ!聞こえたらあっという間に飛んで来て首飛ばされんねんで!」


「よくもこんな敵ばかりの中に堂々と入って来れるもんやねー全く。壬生狼共の頭んなかおかしいんちゃう?」
「絶対に自分達が嫌われてる事さえも理解しとらんよあーゆー輩は」



こんな似通った言葉が耳の良すぎる晃にはうんざりと言うほど聞こえてくるのだが…。

中には晃を、
「かっこいいなぁ、あの壬生狼はんv壬生狼とは思えないくらいの顔立ちやぁーv」と褒める者もいる。



しかし、さっきから道を態と塞がれたり水をかけられたり…。
嫌がらせの数は相も変わらず多い…。



するとこんな声も聞こえた。


「――いいか勇之助。あいつらやで。
 ――あいつがいい。一番手前にいて当たり易そうな月村や。」

(これは前川邸に住んでいる2人の子供の声か――。)

町人に対して怒っている神谷を沖田が慰めている間、晃はそれを見ながらもきっちりとその声を聞いていた。



――その時――


パシッ!!

当てられる事を分かっていた晃は驚きも怒りもしなかったが、「住ねや壬生狼」と呟いた彼等の声が神谷にまで届いてしまった。
何故か気の短い神谷は2人の子供を怒りながら追いかけてしまったのだ。



「行っちゃったよ神谷さん…。どうする総司?」
「追いかけるしかないんじゃないですか?
 神谷さん1人だと何するか分かんないし……。」
「本当に世話のやける子だね…。」
「晃、前弟が欲しいとかいってふて腐れてませんでしたっけ?」
「――そ、そりゃそうだけど、神谷さんってかなりの行動派だからちょっと困る時が…。」
「そんな事より早くしないと神谷さん何するか。」
「――自分から話持ちかけておいてそれは無いだろ…。 ま、仕方ねぇ、行くか。」

晃が最後に呟いた時には総司は先に走り出していた。

「お、おい総司!!待て!」

――とか言いつつも晃はどんどんと先に進んでいって、その神速の速さで総司を抜かし、神谷の元に着いた時には三十尺(約10m)程距離が開いていた。


「晃、走るのが速い…。」
「しっ。今いろいろと喋ってるから。」

晃達は陰に隠れ、先ほどの子供が神谷に愚痴っているのを聞いた。


話を聞いている以上、八木の子供達が自分達を嫌う理由は予想と全くと言っていいほど同じだった。

突然晃達が来た為に友達も居なくなり、自分の父親も悪者呼ばわりされているのだそうだ。


「…だから、怖そうな芹沢先生は避けて、弱そうな私達に泥団子を投げた訳ですか。
 情けないですねぇ。」
ひょこりと顔を出して総司が言った。

すると、八木の子供(為坊と勇坊)はお前には言われたくないと怒り、振り返って帰ろうとした。



――が、


ドンッ!

「小童なんのつもりだ!?」

為坊と勇坊が敵方浪士にぶつかり、泥を服につけてしまった。
それだけで敵方は子供に対して刀を構えた。

「しっしばし待たれ!」
「許しておやりなさいよ。子供のした事じゃないですか。」

止めに掛かろうとした神谷の前に沖田が立ちはだかり、晃は「為坊と勇坊をお願いします」と神谷に行って前へ向き直った。


「――その隊服、壬生狼か。
 デカイ顔しやがって。よくもそんな悪趣味な格好で町を歩けるものだな。」

敵方の4人組のうちの長らしい人が侮辱するが――

「酷いなぁ。気に入ってるのに…。」
「(……っ!!こいつふざけてんのか!?)
 あの、気に入ってますけど、刀を抜くのなら命掛けてくださいね?」

晃は笑顔で言うが、総司に内心ムカつきつつ足ですねを蹴る。
勿論痛がっているが、そんな事晃にはお構いなし。
向こうは既に刀を構えているのだ。

「止しましょうよ……と言っても無駄のようですね。」

沖田は気を取り直したのかそう言い、ほぼ晃と同時に走って行った。

ザ…!

ザシュっ


一人づつ斬ったところで、後方から聞き覚えのある声。

「沖田ぁー!月村ー!助太刀いたすぞーっ」


物凄い勢いで走ってきて、あっという間に2人を斬った芹沢。

小川(用水路)を超えた向こうには人だかりが出来ていて、人斬りの瞬間を見物していた。

神谷が関心していると、芹沢は無論酔っ払っていて倒れこみそうになったところを沖田が支えた。

「やっぱり飲んでる…。
 巡察なんて名ばかりなんだからなぁもー。」

芹沢はご機嫌満足。
良い運動をしたとか言いつつニコニコしている。






その後、神谷が芹沢を(一応)認めたり、為坊達が謝る代わりに食べれるお団子を沢山持ってきてくれたり…。
和やかな一日だった。

まぁ、不貞浪士達との斬り合いは和やかと呼ぶべきではなかったが。


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