1/1






翌日、美味しそうな匂いで目が覚めた晃は、直感で危ないと思い、急いで匂いのする方へ行った。

そこには既に皆居た。総司も居る。
皆久々の美味しそうな食べ物に歓喜の声を上げていた。



皆の目に映る朝餉は、銀シャリの白いご飯


大根やかぶが大胆にも大きく切られ煮込まれた煮物


かなり太めに切られた漬物―――


全てがいつもの数倍はあろうかという大きさだった。




そして、この朝餉を作った当の本人、神谷はとても満足そうにしている。


「あー…あのね神谷さん――」
総司が注意を話そうとすると、横から黒い影が現れた。




「総司、 晃。」



バンッ

バシッ!!


次の瞬間、総司も 晃も顔面に平手打ちを食らってすっ飛んだ。

「「……っ!!」」
「土方副長!?」
「トシ…っ!」

騒ぎに駆けつけた近藤と神谷の声が混ざった。

「近藤さんは黙っててくれ!
 朝飯を作るのは 晃と総司でいつもやっている筈だろう?!
 何故もっと早く起きなかった?!
 総司には神谷の世話を頼んだ筈だ!
 なんのつもりでこんな飯を炊かせたんだ?!」

土方は晃の頭上を殴った後、総司を平手で殴った。

「「すみません。」私の監督不行き届きです。」

2人が謝ると、神谷が土方に訴えた。


「私が何かいたらぬ事をしたんですか?!
 それなら私を――」
「責任者はこの2人だ!
 お前等だけで善処しろ。いいな !?」
「「はい…」」

総司は鼻血まで出している。
土方に顔面を殴られた時に拳が鼻にまで当たったのだろう。

「他の者は外へ出ろ!
 朝飯前にひと汗かくぞ!」

隊士達は皆、土方の恐ろしさと、あっけなく晃と総司が殴られている事に驚いておそおそと土方の言うとおりに動いた。







「大丈夫ですか先生方!?
 申し訳ありません。私の為にこんな………!」

今は朝餉を作り直しに来ている。

「大丈夫ですよ、慣れてますから。」
「でも先生方、昨日は私に付き合って頂いて遅くなったんですから、理由くらい言ったっていいじゃないですか?」
「そんなのただの言い訳にしか過ぎませんからね。
 余計に殴られちゃいますよ。
 いくら私達でも、土方さんの拳骨はかなり痛いので…。」


冷汗を掻きながら晃が言った。手を頭の後ろへ回して頭を掻いている。

それから3人で暫く話しをし、神谷が土方の態度が気に入らないと喚く故に晃と総司が一緒になって宥めようとするが神谷の機嫌は治まらずに土方の愚痴をこぼしてばかり。
討幕派の敵だったら、 晃も総司も、もしかしたらここで痛めつけているところだろうが神谷に対してそうは出来ない。

しかし、そんな彼等だって―――。

「土方歳三!!
 百姓出の偉ぶり副長29歳独身エセ武士!!」

――とまで言われれば掴みかからないまでも怒りはする。

無言になった2人の空気を読んだのか、神谷もすっかりと黙ってしまった。


神谷に分からせる為にも、総司は神谷に土方の下へ行き、朝餉の報告をするようにと言わせた。

普通だったら土方の本当をばらそうとは思わない。
――けれど、神谷にならばそれを教えてもいいと、そんな気が総司だけでなく、 晃にもしたのだ。
だから晃も総司の行動を止めようとはしなかった。


「 晃。神谷さんが土方さんの本当本性を知るのも、すぐだと思いませんか?」

神谷に見せた怒りの表情とは一変して、神谷が出て行った後すぐに2人はいつもの穏やかな表情に切り替わった。
「ああ。だろうな。 
 …それに、神谷さんはきっと、――――――大物になる!」

そんな妙な確信が 晃にはあった―――



- 8 -


[*前] | [次#]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -