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静かな部屋の一室。
そこに、先程から書いていた書き物を終えた一人の老人が筆を置き、机上にある茶に手を伸ばす。


そして、ふと気付いた。






ダダダダダダダダダダ..........


何やら騒がしく足音が物凄い速さで近づいている。
足音が大きくなるにつれ、机上の茶も波打っていた。


「全く、騒がしいのう。」


バンッと大きな音を立てて開かれた扉に構う事無く、茶を啜る。
忍は冷静になることが肝心だ。

どうも部屋の外が騒がしい気がするが、今来た忍は楽しげである。
常なら悪い報告ではなさそうだと思うであろう彼だが、この忍を前にしてはそうもいかない。
なんというか、この笑顔にはからかいの意が含まれているような気がしないでもない。


「火影様!早く外に出てみてよ!
 前より進化してるから!!」


進化とは何の事だろうか。なんだか嫌な予感しかしない。
目を細めて報告にやって来た、まだ少しあどけなさの残る顔を見やる。





「なんじゃ美湯。またナルトのやつが何かしでもしたか?」


いいから屋上に出てみてと言って話にならない、美湯と呼ばれた少女の後からやってきた他の忍二人に、話を聞くことにした。
どうもまた『ナルト』が代々の火影の顔岩に落書きをしたらしい。
ひとつ、重いため息をついた。



悪戯をするのはいつもの事。顔岩に落書きをしたのも今まで何度かある。
が、今度はペンキで落書きとは。



「とにかく本っ当に火影様も見た方がいいってアレ!
 前代未聞だから!」
「え………あの、美湯さん…。」

ここは困るか焦るべき時だ。
なのに隣でずっと満面の笑みで火影の前に立っている美湯に、事態を告げに来た忍二人は戸惑う他ない。
普通の神経ならば、あの誇り高き歴代の火影の顔が彫られた顔岩に落書きをされていて笑っていられるはずはない。


「あのねぇ、美湯。笑い事じゃないでしょうよ、今回ばかりは。」

失礼しますと入ってきて、銀髪の男がゆったりと彼女に話しかけた。
どうも顔岩に書かれた落書きの方に困っているというよりは、落書きを見てからずっと満面の笑みの彼女に困っているように見える。


「あっカカシ!カカシも見た?
 この前のより傑作だよねあれ!」
「だからねぇ、美湯………ほら、笑わないで。」
「カカシもあれみて面白いと思わないの?!
 まーどっちにしたってカカシもあれ見て困ってるって感じじゃないけどさー。」
「え、そう?これでも困ってるんだけどなあ。」



 
「あ…あの、火影様…。」


美湯とカカシのやりとりを見かねた、忍のうちの一人が火影に話しかける。

どうしてこの状況でこんなにもこの人は笑っていられるんだと、言いたくても言えないこの忍。
彼は、中忍であったから。
いくら火影に無礼を働いていても、彼女達は上忍である。

その上今の様子とは打って変わって、まだ若いながら実力もあり、医療忍者からの人望も厚い。
明らかに立場が上であるこの人にでかい口を叩けるはずも無い。



「しっかしナルトも、よくあんな事出来たもんだよね。
 勇気あるわー。」


アハハと笑う彼女に、だんだん疲れてくる。
いつまでその笑顔でいる気なのだろう。

「美湯、ちょっと笑いすぎだって、お前。
あーほら、人の話はちゃんと聞かないと。」

まったく、こいつの父親か、オレは。




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