05
夜、吹雪士郎は夢を見ていた。暗闇の中で、一人ぽつんと立っている。
右を見ても、左を見ても光なんて一切ない。
…ろだ、れ?
そんな中、声が聞こえた。
し、ろ…ぅ誰なの?
何で僕の名前を知ってるの?
俺は…そこまで言うと、声が途切れて、周りが暗闇から森に変わった。目の前には大きな泉があり、葉っぱが一枚ヒラリと落ちて波紋を作る。
士郎は無意識に泉の方へ足を傾けていた。
…し、ろ…うああ、まただ。
でも、この声を知っている。
自分の声みたいだけど、少し強い口調のような声。
――ポチャン
泉に一滴の雫が落ち、また波紋を作る。
こっち…一歩一歩と泉の方へ向かう。それと同時に士郎の考えは確信になっていく。
士郎は泉の前にしゃがみ込んだ。
ああ、やっぱり
「アツヤ…」
泉の中を覗き込むと自分は映らず、アツヤが映り込んでいた。
久しぶりにアツヤが出る夢を見て、士郎は嬉しそうに微笑んだ。
会いたかった
士郎…俺は此処にいる泉の中のアツヤは士郎に手を伸ばす。
後少しでこちらに届くと言う所で泉が波紋を作り、通らせないようにしている。
「アツヤ、君に会いたいよ」
ああ、俺もだ士郎も手が重なるように泉に手を付けた。
「ねぇ、アツヤ…僕、可笑しいんだよ。」
士郎がそう切り出すとアツヤは微笑みながら、耳を傾けてくれている。
「アツヤがまだ、生きているような気がするんだ」
可笑しいでしょ?
そう続ければ、アツヤは一瞬目を見開き、次は困ったような笑みを浮かべた。
「でも、夢でもアツヤに会えて僕は嬉しいよ」
うん、俺も…士郎とアツヤは顔を見合わし、笑い合った。
ピシッ
そんな幸せな時間は長く続かず、二人の間に亀裂が入る。
「!」
ピシピシッ
次は周りの森までも亀裂が入り砕けた。そして、急な浮遊感と同時に一気にまた暗闇に戻ったのだ。
真っ暗になった中、士郎とアツヤは少し光が瞬いていて士郎はアツヤがまだいる事を確認するとホッと息を吐いた。
だが、段々と離れて行く。
「アツヤ!」
士郎は離れていくアツヤに手を伸ばす。
大丈夫だ、心配すんな。兄貴「っでも!!」
悲しそうな顔をする士郎にアツヤは一つ息を吐き微笑んだ。
もうすぐだから「ぇ?」
もうすぐ…そこで、アツヤが完全に見えなくなり、士郎は目を覚ました。
「アツ、ヤ…」
夢見(会えるから…)(…ねぇ、どういうこと?)
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