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【エイリア学園、とうとう雷門イレブンに敗れた!!】
テレビを点ければ、どこもかしこもサッカー番組。
特に、ずっと世界中のサッカー協会を脅かしていたエイリア学園が雷門に敗れた事でニュースにもなっている。
『…』
リモコンを弄り、巻き戻しにしてリプレイをする。
雷門イレブンとエイリア学園が攻め合う映像が流れ、雷門の一人が選手交代したのがわかる。
交代した選手は何か吹っ切れた涼しい顔で攻め上がっていた。
少し立ち止まったりしてたけど、チームメイトが何かを言ったのか瞳に光を宿していた。
【ウルフレジェンドッ!!】
その選手は必殺技を使い、ゴールを決めた。
それからチーム全員のペースが上がり、逆転勝利をしていた。
勝った事に喜びハイタッチをしている。その中にウルフレジェンドを決めた背番号には9と書かれた少年を見つめる。
『……兄貴』
髪色と目の色が似ても似つかない二卵性双生児。
唯一似てる所はくせっ毛に顔立ち、身長に声。鬘を被って後ろを向いていれば、誰もが気付かないだろう。
そんな血の繋がった唯一の兄貴がテレビに映って活躍している。
何時からだっただろうか。
こんなにも兄に会いたくて堪らない自分がいる。
兄と一緒にサッカーをしたいと願う自分がいる。
9年程前のあの時。雪崩の事故にあってから、ずっと兄に会っていなかった。
向こうはきっと死んでると思っているだろう。
俺も最近までそうだった。
テレビに兄が映るようになった。もちろん、俺は目を疑った。雪崩の事故で亡くなっただろうと思った兄が生きて雷門イレブンに入ってエイリア学園とサッカーをしていたのだから。
でも、時折、兄貴は俺のような人格をだしていた。
ああ、俺に縛られてるんだな
その考えにたどり着くのに時間は掛からなかった。
事故前に約束した事を守ろうとしていたんだろう。
二人で完璧になる
だけど、兄貴の完璧と俺の完璧は違った。俺はそんな完璧を望んでいない。
でも、最後の試合で答えが見つかったらしい。兄は…士郎は人格の俺と一つになった。
そうだよ。俺が望んだのはどちらかが完璧になる事じゃない。二人で一つ。二人で完璧になる事を望んだんだ。
テレビに映る士郎。
また一緒にサッカーが出来たらの叶いもしない願いをするけど、怖いんだ。士郎に会うのが。拒絶されるのが。
会いたい。でも、会えない。
また一緒にサッカーをしたい。必殺技を使いあって、喧嘩して、泣きあって、仲直りして…サッカーしようって言い合って、笑いあって…
でも、もう兄貴には仲間がいるから、俺は必要ない。
だったら、俺は此処から兄貴を見守るよ。
遠くから(それが今の幸せ…)
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