08
部活は終わり、夕暮れ時。空は茜色に染まり、月がもう出ていた。
空と同じ色に映り水面が輝いている川の隣では、小学生程の小さい子がサッカーをやっていた。
「あー!アツヤ兄ちゃんだぁ!!」
『よっ』
橋を渡っていたアツヤは小さい子達、Jr.サッカーチームの二人に気付かれ、手を振られた。
振りかえすと二人は目をキラキラと輝かせ、走って来る。
「アツヤ兄ちゃん、聞いてよ!俺な、必殺技作ったんだよ!!」
「アツヤ!サッカー、一緒にしようぜ!!」
『ちょちょっ!一気に話すな、馬鹿やろう!』
ズイズイと近付きながら話す二人の頭を取り敢えず叩き、黙らせる。
痛そうに声にならない叫びをしたあと、ごめんなさいと、頭を押さえながら二人は言った。
『ったく、びっくりした…』
反省した二人に溜息を付きながら言う。
『ってかリュウお前、必殺技作ったって凄いじゃんか!リュウはDFだろ?どんな技なんだ??』
「見てくれる?」
『てか、見たい』
アツヤがそう言うとリュウは嬉しそうに微笑み、ボールを持ってフィールドに入って定位置に着く。
「アツヤ!サッカーするか?」
フィールドにまだ入らず、アツヤの裾野を引っ張りながら聞く晴瀬にアツヤは頷いた。
『もちろんやる!』
部活が終わった後はJr.サッカーチームの餓鬼とまたサッカー。疲れなんて、そんなもの俺にはない。
楽しけりゃ、疲れなんて気にならなくなる。
「さあ、晴瀬来なよ!!」
「行っくぜ!」
晴瀬はFW、リュウがDF。Jr.のサッカーチームで、この二人は最強と言われている。
リュウがゴールを守り、リュウから繋がったボールで晴瀬が点を取りに行く。
まさに完璧だ。
晴瀬はボールをドリブルし、スピードを上げてゴールに向かう。
「いくよ!
ロック・タイフーン!!」
リュウがそう言うと、晴瀬は風と言う名の台風に包まれた。
「くそっ」
台風の中から晴瀬の声が聞こえたかと思うと、晴瀬は台風の中から飛ばさられた。
晴瀬を飛ばした台風は徐々に治まっていき、ボールはリュウの足元にあった。
「ロック・タイフーンはね、台風の中に閉じ込められて最終的にはボールを取るんだよ!」
『へぇ…いい、DF技じゃん!』
満足げに言うリュウにアツヤは興味深そうに見ていた。
「そろそろ大会があるから、この技を使って絶対、優勝するんだ!!」
「俺は元々あるから、新しい必殺技を考えるんだ。」
『大会かぁ…』
二人は生き生きとした顔で楽しみそうに大会の話しをしていて、アツヤは士郎との最後の試合を思い出した。
「アツヤ、大会見に来るのか?」
『行けたらな。
俺もこれから色々とあるし…』
困ったように言えば、晴瀬はそっか…と、見に来てくれない事に悲しく思ったのか落ち込んだ。
『まあ、でも、テレビに映ったりするんだろ?それだったら、見るよ』
「「本当!?」」
『お、おうっ』
ハモりながら言う二人に驚きつつも、アツヤは頷いた。
すると、二人は嬉しそうに笑い、絶対だ!なんて言いながら、指切りをした。
指切りをすると、二人は大会に向けて頑張ると張り切り、フィールドに入って行った。
『…必殺技、か』
面影(昔の俺と士郎みたいだ…)
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