07
『吹き荒れろ…っ
エターナルブリザード!!』
「うわっ」
部活でアツヤは容赦なんてしない。もちろん、部長の神谷もだ。
「っナイスシュートだ、アツヤ」
『おぅ』
GKの中井はボールと一緒に飛ばされながらも、親指を立ててニカッと笑った。
「中井、お前もそろそろ必殺技を習得したらどうだ?アツヤのエターナルブリザードも止めれるかも知れないぜ?」
『おー、神谷』
「ちょっ神谷、本気で言ってんのかしんないけど、俺に必殺技なんて無理だって!」
中井は手と頭を横に振った。実は伯桜サッカー部で必殺技を使えるのは俺と神谷ぐらいだ。
だけど、弱小チームと言われようと、チームの皆は人一倍頑張っている。
「無理って思うから無理なんだ。自信を持て」
神谷は部長であり、顧問がいない時の指導をやっている。
神谷の言う事って一理あるんだよな。
「ぅえ〜、まじか。
まあ、気が向いたら必殺技の一つや二つ作るから…。アツヤ!止められる事を覚悟しとけよ!!」
『ブッ!一生来ないからぁ!!』
「なんだとぉ!?」
『アハハハハっ』
アツヤがお腹を抱えて笑うと、中井は拗ねたようにGKの位置についた。
「さぁ、来い!!」
『え、何?またエターナルブリザードを打って欲しいのか?中井ってMだったんだな…』
「ちげぇよ!」
冗談で引きかけそうになった時、中井はちゃんと訂正した。
「ほらアツヤさ、新しい必殺シュートを作っただろ?その威力を俺が確かめるんだよ。」
『…死ぬよ?』
ニヤリと口角を上げて言えば、中井はアツヤを指差して怒った。
「馬鹿にすんなってば!!それに、初めての必殺シュートを受け止めるって何か楽しみなんだ!!」
『へぇ、じゃあ遠慮なく行かせてもらうからな!』
アツヤは中井の返事を聞くと、ボールを顔の前の高さまで上げて落ちて来たと同時に必殺技を使った。
最初は足でボールを踏み込み、真上に上げる。それと同時に自分も上げた位の高さまで飛び、足でボールに回転を付けさせた。
『さて、中井に初めての必殺シュートは掠りぐらいはするか、なっ!!』
不敵な笑みを浮かべて、勢いよくボールをゴールに向かって蹴った。
『スピーディ・コンバート!!』
アツヤの打ったシュートは右や左に軌道をつくってゴールに向かう。つまり、何処にシュートするか分からないと言う事だ。
「なっ」
着いた場所は中井の真ん前で、後1メートルもしない所まで来ていた。
何たってスピーディ(急速)コンバート(変形)だから、変形をして尚、早いボールなんだよ。
自慢げになりながら、中井を見ると、中井は顔を当たりそうになるのを防ぐため腕で顔を覆った。
『残念、左だぜ』
「ぇっ」
中井が腕の隙間から少し覗くと急カーブをして、中井から見て右の方にゴールしていた。
『ど?俺のスピーディ・コンバートは』
「ハハッ、やられたよ」
お手上げと言う風に両手を上げる中井にアツヤは満足そうに微笑んだ。
『ま、俺もまだまだだな!』
「え?でも、今の凄かったぜ?」
『ぃーや、まだだ。もっと回転やスピードが必要なんだ』
「そうなのか?まあ、頑張れよ!!俺も頑張って必殺技編み出すからな!」
『おぅ!』
この後、何回もスピーディ・コンバートを打ち続け、中井も何回も見逃し、そのまま部活は終わってしまった。
雪と変形(まだ、必殺技を作って、磨かないとな!!)
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