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最近、仕事が増えて来ている。2ヶ月前に来た転入生のせいで役員が次々へと仕事をサボり出したのだ。

唯一仕事を手伝ってくれるのは補佐の如月君だけだ。

彼は一年だが優秀なもんだから補佐として選ばれた。彼は至って平凡な物だから今までの生徒会の中では異例だろう。ただ、身長は高くて僕にとっては頂けない。


…それでも親衛隊から制裁を受けないのは、やはり実力が認められているからか。


「副会長、こちらの書類のほうは出来ましたよ」

「あ、はい。分かりました」


じっと如月君を見ていたら、急に顔を上げたのでびっくりした。

書類を渡すと何も無かったかのように席に着いた。


…危なかった!ばれてない、よね?


「ああ、そういえば副会長」

「はひ!?」

「…はひ?」


…聞き逃してはくれなかったのか。

噛んでしまった事が恥ずかしかったけど、取り合えず羞恥を堪えて、咳払いをしてごまかした。


「…なんですか?」

「え、ああ…実は昨日会計が泣き付いてですね」

「は?会計?」

「はい。仕事をしていないことに罪悪感があるらしく、でも戻るに戻れない、と」


如月君が言うには、会計は一応戻る気はあるらしい。しかし、転入生がそれを妨げるらしく、仕事をしていないのに何故か隈が出てるらしい。

転入生は夜行性なのか…


「俺は戻って来てくれれば嬉しいですけど、転入生まで引き連れて来られたら困りますね」

「あー…」


確かに。

会計が生徒会室に来れば、きっと、あの我が儘な転入生も俺も行く!!とか言って着いて来るだろう。

断れない性格をした会計は折れて連れて来て、泣きながら謝ってきそうだ…。


「…取り合えず会計に連絡を取ってみます」

「あ、お願いします」


頭を下げて言う如月君に苦笑する。


「…ごめんね。如月君に迷惑掛けちゃって」

「いえ、俺も補佐をしていますから、関係なくないんで」


微笑む如月君は見た目平凡でも中身イケメンじゃないか…。

何時しか聞いた事がある。如月君にも親衛隊がいるとかいないとか。


「ああ、もう帰った方がいいですね。暗くなると副会長も危ないでしょう?」

「あ、はい」


そうですね、と言って窓の外に目を向ける。

夕暮れの空も消え始めて、空に暗さが増している。

不愉快な事に、ここ全寮制男子校で僕はよく襲われてしまう。もはや、トラウマとなりつつある。


「副会長、送りますよ」

「え!いいですよ!」

「いえ、俺の自己満足ですから」


そう言って笑う彼はいつも扉の前で僕を待っていてくれる。

補佐は週2でいいのに、如月君は転入生が来てから毎日来ては毎日僕を送ってくれる。


「ありがとう、ございます」

「いえ」

「…如月君が生徒会補佐で良かったです」

「…っ」


如月君が居なかったら、きっと生徒会も纏まらなかったし、僕ももしかしたら帰り道、危なかったかもしれない。


「副会長、」

「なんですか?」

「俺が毎日生徒会に来る理由知ってますか?」


振り向き際にそう聞かれて、でも理由なんて知らないから頭を横に振った。

すると、如月君は照れ臭そうにはにかんで言った。




「副会長に、会うためです」

「…え」


聞いた途端、頭が真っ白になって、でもすぐに言っている意味を理解できて、ぶわっと顔が熱くなった。


「あ、ぇっと…、っ」

「…と、取りあえず、もう暗いですし帰りましょう」

「は、はい」


吃りながら、そう言う如月に返事をし、僕は前を歩く如月君の背中をぼぅっと見つめた。









ただ、二人共気付かずに繋いでいた左手が妙に暖かかった。

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