03
幸喜と別れてからも会長といる所をよく見かけるようになった。
それはまるで神様が惨めな俺に見せ付けるように、それは頻繁に。
そんなある日、一人で放課後歩いていると会長にばったりと出会ってしまった。
近くにはいつものメンバーも煩い転入生も今でも愛おしく感じる幸喜すらもいなかった。
「…お前、確か羽山海里だったか?」
鋭い目が俺を貫く。
きっと、会長は俺が幸喜と付き合っていた事を知っているのだろう。
「そうですけど…」
「そうか…」
だけど、少し気まずそうにする会長に渇いた笑い声を出した。
「幸喜の事ですか?」
そう言えば大袈裟に肩を揺らす。
「安心して下さい。ちゃんと幸喜と別れました。」
「…お前は幸喜の事が好きじゃねぇのか?」
「好きですよ」
何て愚問な質問なんだろうか。好きだよ。幸喜が大好きだ。
その気持ちを伝えれば会長は目を見開いた。なら、どうしてだ?と、目を見れば分かるくらいの驚きように、俺は微笑んだ。
「好きな人だからこそ、幸せになってほしいんです」
「っそれは俺も同じだ」
うん。知ってる。会長の幸喜を見る目って凄く優しい。優しくて、愛おしい目をしている。
幸せにしたいって思いが俺にも伝わっている。
「…幸喜、今、会長といれて幸せそうです。とても笑顔で、隣にいると嬉しそうに微笑んでる」
「…」
「それは俺に出来なかった事」
幸喜は俺といても、何処か気を使っていて、転入生が来てからも無理して笑う事が多かった。
「会長」
「…何だ?」
「幸喜を幸せにして下さいね。これからもずっと…」
「当然だ」
そう不敵に笑う会長に俺は笑みを返す。この人なら大丈夫。幸喜を幸せに出来る。
だから、もう泣くのは今日で終わらそう。
あれからも、よく二人を見かける事があって、まだ胸が痛む事がある。
例え、もう幸喜に思いを伝える事も、好きだって言ってもらう事も出来なくても、これは俺が歩むべき人生の一欠片に過ぎない。
これはこれで良かったのかもしれない。
人生の一欠片
((俺、また恋をする事が出来るのかな?))
(なぁ、何で俺、羽山の事ばかり気になるんだ?)
(知りませんよ。自分で考えて下さい)
モドル