02
転入生と同室になった幸喜は転入生に連れられて行くようになった。
幸喜は転入生に巻き込まれた所為で、生徒会の奴らや他の人気者と関わるようになっていった。
もちろん、それは嫌々な訳であって最初の内は俺の所に逃げ込んでいた。
転入生の所為で、幸喜の周りには人がいなくなって、終いには親衛隊に目を付けられていた。
俺に抱き着いて、もう嫌だ、と泣いていた時を思い出す。
だけど、いつからだっただろうか。
幸喜は俺の所に来なくなった。
俺に涙を見せなくなった。
笑顔すらも…
遠くで走って何処かに行く彼を見かけはじめた。
彼が泣いている声が聞こえた。慰めている誰かの声も。
そして…
笑顔を見せている相手は俺じゃなくて、学園で人気を誇る斎藤会長だった。
人生で初めて胸が痛くなった。苦しくなった。
人生で初めて大きな声で泣き叫んだ。
人生で初めてこんなにもホッとした。
ああ、良かった。幸喜があんなに笑顔でいてくれている。例え、それが俺に向けているんじゃなくても…
その姿を見て一週間が経った頃、俺は幸喜にメールで呼び出された。
場所は幸喜に告白をされた場所。
着いた時、幸喜は悲しそうな顔で微笑んでいた。
「…海里、ごめん。…ごめんね」
「うん…」
「僕と別れて」
疑問符なんて付いていない言い方。お願いじゃなくて、それは有無を言わせない言葉。
ツキリと胸が痛んだけど、分かっていた事。
「…さよなら、幸喜」
この痛みもまた人生に一度は味わう感情の一つなんだろう。
モドル