06



校舎から出ると、流れる沈黙。チキンで口下手な俺はどうすればいいんだ?

隣を歩く会長を横目でちらっと見て、話題を考える。


「神楽と話すのは久しぶりだな」

「え?」


フッと軽く笑う会長にへんてこな声が出てしまった。


「初めて話したのは確か一年程前だったな。授業を休む事を伝えるように頼んだんだ」

「…よく覚えてるな」


会長は忙しい人だ。だから俺の存在すらも忘れているかもしれないと思っていたけど、そんな事はなかったようだ。

少し嬉しくなって心がポカポカと暖かくなった。


「俺は覚えるのが得意だからな」

「そんな事、誰でも知ってるよ」

「そうか?」

「…新入生とかは別として…多分」


絶対に学園中が知っているとは限らないから最後は尻つぼみになってしまった。

それを聞いていた会長は軽く笑っていた。


「笑わないでよ。てか、覚えるのが得意でも、そんな事覚える必要なくない?」


本当は覚えてくれて嬉しいけど、そう聞いてしまう程短い会話だった。


「……どうしてだ?」

「だってさ、一度だけの会話で人生に関係ない話しだったんだから、そんな記憶捨ててしまえばいいだろ。」


会長の少しの間に疑問に思いながらも、思った事を口にした。

俺なんかの会話を覚えておく必要なんてないんだ。


「…神楽は俺との会話を覚えているのか?」

「…まあ、一応」


会長の言葉にドキリと心臓が震え、顔が赤くならないように顔を強張らせて返事を返す。

会長の顔を見なかったけど、そうか。と、呟いた声は安堵したような声だった。


「神楽はさっき記憶を捨てろとか人生に関係ないって言ったけど、俺は捨てれないし人生に関係ある」

「…え?」


「人生に、俺に関係あるから記憶を捨てれないんだ」


会長は淡々とそう告げていたけど、俺にはどういう意味か分からなかった。

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