07
驚いたような顔が俺を見る。自分でもなんでか分からないけど羽山に頼って欲しくて笑って欲しくて堪らない。
「あの…委員ちょ、う?」
「…んな……くれ」
「え?」
「そんな顔、するな…俺を頼ってほしい」
少し声が震えてしまった。でも何でか羽山には頼って欲しくて、そう言葉にすれば羽山は驚いたように目を見開き、キョロキョロと辺りを見渡した。
俺は羽山に言ってるんだか…
「あ、ぇと…は?」
「羽山にはそんな顔は似合わない。笑ってた方がいい。俺を、頼って欲しい」
そう言えば「アイツってもしかして、」と会計の声が聞こえた気がした。
羽山を見遣れば驚いた顔のままで固まってる。あんぐりと開いている口が何とも可愛らしい…。
可愛らしいと思うなんて何か自分じゃないようだ。でも、今羽山に思うのはその言葉と、
そこまで考えると思わず、つ、と目を細めた。
「…っい、委員長?べ、別に凄く困っているようなことではなくて…ちゃんと何かあれば頼るでしょうし…」
目を細めれば、固まっていた羽山はハッとしてワタワタとしながら言ってくる。
“頼る”といった、その言葉が嬉しくて、その反応が新鮮で、俺に対してしてるんだって思うと笑みが深まって、時々合う目が、
「ああ、愛おしいな」
「…へ?」
俺が言葉を発すれば羽山だけじゃなく周りの役員も固まった。
言葉にすれば更に気持ちが溢れ出す。玲斗が言ってたのはこのことだったんだな。そりゃ自分で気づかなきゃいけないか。
羽山に対するもやもややドキドキは恋だとか馬鹿でも分かることを俺は気付かなかったのか。ああ、恥ずかしいな。そりゃ、森岡は会長と付き合ってんだからそんな感情を持つはずだ。
心の中で気付かなかった自分を罵倒して、羽山を見れば羽山の目の中に自分が映っていて愛おしさが抑え切れなくなる。
ゆっくりと羽山の頭に触れて髪を優しく梳けば、羽山は段々と顔を真っ赤にさせた。
「お、俺!しっかり任務を遂行しました!さ、さようならあああ!!」
「え…?あ!」
途端、羽山は林檎のように真っ赤になった顔で恥ずかしさあまりに涙目になりながらも素早い速さで礼をして生徒会室から駆け出て行った。
「え、は、羽山!?廊下は走らない!」
「そっちかよ!!」
走り出た羽山に大きな声でそう言えば会長に頭をひっぱたかれた。
逃げられたとは重々承知だ。だけど羽山のあの反応は初々しいにしても脈ありだと思うし…逃がす訳ねぇだろ。
会長に叩かれた頭を摩りながら森岡を見る。
「森岡…」
「は、はい!」
「羽山は俺に振り向かせるから。」
「え…、あ、はい」
森岡にしては他の男に元カレを振り向かせるからとか言われても、どういえばいいのか分からないだろう。俺もそんなことあったら対処出来ないと思う。
「にしても意外だねー。委員長って羽山君が好きだったんだー?」
「自覚したのは今だけど、意識しはじめたのはお前らが付き合い出したと聞いた日からだな」
「げ、結構前じゃん」
「今まで気付かなかったのが逆に凄いですね。」
そう言えば苦々しい顔の会計と呆れた顔の副会長に挟まれてしまった。
重々承知してるって。ちゃんと俺は馬鹿だったって気付いてるって。
にしても羽山に逃げられて逃がすつもりないけど、これから避けられたらどうしようか。嫌悪な顔で見られたらどうしようか。
…前途多難だな
モドル