05
いつの間にか眠りについていた。
夜が明け、太陽が出始めた頃、俺はもう目を覚ました。
昨日は思う存分泣きまくった。会長との事を今まで引っ張り続けて、もやもやとした感情もすっきりとしていた。
遠ざかって行ったその存在にいつの間にか諦めがついていたのかもしれない。
ガランとした部屋に悲しみすら感じない。
ああ、これで良かったんだって笑みすら浮かぶ。
「さよなら、」
部屋に言っても何の返事もしないけれど、この部屋で俺は今まで過ごして来た。悲しい時もこの部屋で泣いて八つ当たりして人ではないけれどお世話になった。
だから、最後にお別れを。
部屋から出る頃には学生達も目覚め始めただろう時間だった。
散り散りに食堂や部活に向かう学生は廊下を歩く俺を見ては顔を歪め、陰口をして終いには早く消えろとの言葉。
人間一人一人に人権は存在すると言うのに高校生ともあろう者がどうしてそう簡単に口に出せるのだろうか。
悲しい現実に逃避したくもなる。
「言われなくても望んだ通り学園から消えるって…」
だけど、ただ苦笑が零れる。ポツリと呟いた言葉は誰にも届かない。
寮の廊下からは学生のクスクスと笑う声が響いた。
自分の足は早く早くと学生達の声から逃げだすように動いて、だけど目を逸らさないように皆に弱みを見せないように顔を上げて歩いた。
矛盾しているけど、楽に感じた。
あと数時間もしない内に俺は学園から去って行く。だから大丈夫、大丈夫。
自分にそう言い聞かせて歩みを止めずに階段を下りていた。
「あー!!広樹!」
「っぁ」
階段を下り終えた途端に聞こえる今回元凶になった転入生の声が聞こえた。
そちらを見れば転入生の他に元親友と生徒会のメンバーがいた。勿論、会長もいる。
「…やっほぉ」
ニヘラと笑って手を振れば、転入生は睨んだ顔で俺の腕を掴んだ。
いきなりな事に驚き、しかも転入生の握力は強いのかギリリと腕が締め付けられる。
「広樹、最低だぞ!!お前も生徒会なのに他の奴らに任せんなよ!皆忙しくて大変なんだぞ!!」
「…はっ?」
「それに仕事する暇がないなんて嘘付くなよ!またセフレと遊んでたのか!?」
腕を掴んで睨み付けてくる転入生の言葉に口が震える。もやもやとした感情がまた現れる。
「な、に…それぇ?俺がいつ、誰に、どうして、誰と、何やって嘘付いたって言うのぉ?」
「知らねぇけど皆が言ってるんだよ!」
「皆が?どうして?」
「どうしてって…っ!」
「何を根拠に?何を見たの?本人が違うと言っても君は俺を信じてくれない?」
責め立てるように見てくる周りに、とうとう体が逃げようとし始めた。顔を俯かせて今、悲しくて涙が出そうな顔を隠して言葉を繋げる。
モドル