俺、神楽千里は恋をしている。儚く実る事などない恋を。
その人は同じクラスでありながら学校の頂点に立つ男、東宮隆司生徒会長。
親衛隊の規模、周りからの信頼も多く、彼を好きだと言う人は数知れない。
今まで誰とも付き合った事のない彼に言い寄る人間も数知れない。
え?俺?
俺は口下手だし、何より会話をした事なんて二言程度。
「次の授業、休む事を伝えててくれ」
「あ、うん。分かった」
「すまない。ありがとう」
「いえいえ…」
この会話も、もう一年前の事だ。懐かしいなぁ…
と、思い出に慕ってる場合じゃない。
今日、俺はいつもと何ら変わらない日常を過ごしていたはずだった。
普通に起きて、普通に登校し、普通に授業を受けて、普通に寮へ帰った。
あ、俺、特待生だから一人部屋になっているんだけど…
寮に帰るとリビングの電気が付いているから何事かと思って扉を開けた。
「あ、やっと帰って来たか。高校の時、部活してなかったはずなんだが…」
そこには俺の名を名乗る不審者がいた。
モドル