01



泣いた。泣くだけ泣いた。


だって苦しかったんだもん。僕は会長と付き合っている。なのに、会長は転入生とイチャイチャしている。逆にこれで泣かないって人いないよね。

好きな人、まして恋人が目の前で堂々と浮気してるんだもん。


悔しいよ。会長は僕といて楽しくなかったの?幸せじゃなかったの?所詮…、遊びだったの?


「ほら皐月、俺のケーキやるよ」

「本当か!!?やった!俺、このケーキ好きなんだよなぁ!」


止めて。目の前で、僕の前でそんな事しないで。


「ちょっと会長!抜け駆けは止めて下さい!」

「ハッ早いもん勝ちって奴だろ?」

「っ」


ガタッ

もう、嫌だ。我慢なんて出来るわけない。僕の事、嫌いになったんなら嫌いって言ってよ!


「宝どうしたんだ?宝も一緒にケーキ食べようぜ!!」

「…も、…て」

「?何言ってるか分かんねぇぞ!!お前、前々からだけど練習し「もう止めて…!」

「え?」


此処は生徒会室。この場にいる役員と転入生の信者が驚いてこっちを見ている。

僕、初めてこんなに声を張り上げたかもしれない。


「宝、何言ってんだよ?」

「…君、じゃなくて」


キョトンとして聞いてくる転入生に頭を横に振り、傍にいる会長を目に映す。


「あ?俺…?」

「いがい、誰がいると思う」

「……」


じっと見つめ返す会長に一度目を伏せて、また目を会長に移すと、会長は心なしかニヤニヤと笑っていた。


「で?何だ?」

「何だ、じゃない、でしょ」


僕らが付き合っている事を知っている他の役員はハラハラとした様子でこちらを見ている。


「会長って、僕と…付き合ってる、…だよね」

「……」


…っ何で無言なの?駄目だ。見せたくないのに涙が溢れる。


「っそっか、遊びだったん、だね」

「…宝」

「でも、ね…僕は会長が好きなんだよ?それは確かで…っ」


遊びだったとしても僕は会長が好きだった。大好きだった。愛していた。


「幸せだったんだよ」

「宝」

「だから、っ…っへ!?」

「たーから」


な、何で会長に頭を撫でられてるの!?

驚いて会長を見ると、今まで見てきた優しい笑みを浮かべていた。


「宝、俺の事好きなんだ?」

「……う、ん」

「皐月に…転入生に嫉妬したんだ?」

「っ…うん」

「そっか…」


頷くたびに会長は優しく微笑んで優しく僕の頭を撫でてくれる。

僕は会長に嫌われたんじゃなかったの?

会長の行動が分からなくて、不安になりながらもまた質問をした。


「…会長は、僕と…付き合って、ますか?」


聞けば会長は目を丸くした後、クツクツと喉を鳴らしながら笑った。


「当然だろ」

「っじゃあ、何で…転入生とイチャイチャしてたの…」


完全な浮気宣言をされた気分だ。やっぱり僕との交際は遊びなの?

遊んで楽しい?こっちの想いを知っておきながら弄んでるの?


「…今宝が考えてる事は間違ってると思うよ」


ちがう?


「っじゃあ何!!僕は会長に堂々と目の前で浮気されてたんだよ!?やっぱり僕とは遊びだったんでしょ!?僕は玩具じゃない!弄ばれるためにアンタを好きになったんじゃない!!」


僕はそこまで馬鹿じゃない。遊ばれてまで傍にいたいなんて思わない。


「本気だよ」

「…は?」

「俺は本気で宝が好きだよ」


俯かせていた顔をあげれば、そこには悲しそうに微笑んでいる会長がいた。

何で会長がそんな顔をするの?僕がそんな顔をしたいよ。


「俺は宝をそこまで追い詰めてたんだな…」

「……」

「俺はな、宝に嫉妬して欲しかったんだ」

「…した、けど?」


もうとっくにしている。逆に嫉妬をしすぎて転入生をどうにかしてしまいそうだった。


「ああ、だから俺、凄く幸せだ」

「…しあわせ?」

「ああ」


だって、と続ける会長の顔は俺様でクールと言われていた会長に似合わないくらい緩んでいて、端から見ても幸せそうな顔だった。


「大好きな宝にこんなに愛されてるって分かったからさ」

「…っな、に…それ」


恥ずかしい言葉だし、だけど…


「んー?」

「…う、れし、い…」

「ははっ喋り方戻ってるぞ?」

「ぅ…っぅく…グス」


緊張が解けたのか涙がだんだん溢れてくる。

ボロボロと涙を流す僕を見て、会長はまた微笑むと優しく抱きしめてくれた。


本当は会長にこれからは止めてもらうように怒りたいけど…、




今だけ甘えていいよね?

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