恋の使い02
「やっぱ、花枝すごいなー」
先日、よく分からない恋人同士を見た一件から花枝はクラスメートから尊敬の眼差しで見られるようになった。
それについては特に友人であるコイツ、道隆久遠に面白がられている。
「何が?」
「恋のキューピッドの力」
「…はぁ、」
よく分からないから首を傾げる。
いつの日からか花枝は恋のキューピッドと言われるようになった。理由はよく分からないけど、確かに沢山のカップルの誕生と報告を見てきた。
何故一々報告するのか分からないが、決まって御礼を言われる。
「今月、三回目じゃね?」
「…何で好き好んでもない交際の報告を聞かなきゃいけないのか疑問だよ。俺は親か?神父か?」
「ぶっふぉ!確かにww」
毎回息子に恋人を紹介されたり、彼とずっと一緒にいるとかなんとかで誓い?宣言?されて目の前でチューしたり、ここは教会じゃねぇとか何度も思うが堪える俺、えらい!
「俺が何をしたって言うのさ…」
「無意識に何かしたんじゃね?」
「記憶にないから」
相談に乗るったって、ほぼ話を聞くだけだし身に覚えがない。口にしても大したことを言ってない。
だからこそ色々と意味が分からないのだが、まあ皆が幸せならいいとは思う。
「あ、そういえば編入生が来るって噂聞いた?」
「編入生…?」
久遠の話を聞いた途端ゾワゾワと悪寒が走った。
鳥肌ヤバい。
「何か嫌な予感しかしない」
肌寒く感じて腕を擦っていれば久遠だけではなく聞き耳を立てていたのであろうクラスの殆どの人が動きを止めた。
「?」
急に時が止まったように静まり返り動かなくなったクラスの皆に疑問を感じて首を傾げれば、皆は目配せをして頷きあっていた。
え、何そのアイコンタクト。何で皆伝わった風なの。俺一人ついていけないとか仲間外れ良くない。
「あのさ、仲間外れは…」
「お前ら!今すぐ他のクラスにも伝えろ!風紀委員は他のメンバーに警戒を呼び掛けろ!親衛隊持ちは念のため話し合いをしておけ!」
「らじゃー!!」
「くそっ仕事だけは増やされないことを祈るっ」
「面倒事だけは起こさせねぇ」
「それでは総員、動け!」
『オーー!!!』
「…………………」
何がどうなってんだってばよ。ガチでついていけねぇぜ。
話し合い…というより何かの団体のように行動を移すクラスメートを唖然と見ていると久遠に指示されたように携帯を取り出す者や教室を出て行く者がいて何やら伝達をしている。
「ありがとな、薫。お前のお陰で学園は守られる。」
「……」
それはそれは安堵したような朗らかな笑みを浮かべばる久遠。
いつの間に、そんな壮大な話が出たのか…
ごっこか。集団ごっこ遊びか。また仲間外れか。くそっ泣けてきた。
お願いだから、ついていける話をしてください。
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