恋の使い
 


それは、ある日のことだった。


「花枝君ありがとう!」

「……え?」


放課後の教室に突然入って来た、確か隣のクラスの少年が花枝と呼ばれる少年の元に行くと、手を取り嬉しそうに御礼を言った。

言われた本人は何が何だか分からないというようにポカンと口を開けている。


「僕ずっと彼を勘違いしていて、もう友達以上にはなれないんだって思っていたの。」

「は、ぁ…」

「でも、花枝君が話しを聞いてくれたお陰で勇気が出たよっ」


何のことだろうと思いながらも花枝は過去を振り返っていた。

彼と最近会ったのは二日前の放課後ことで、よく行くベンチで泣いていたのを話しを聞いたことだった。

確か内容は友達が別の友達と最近よく一緒にいて、一番仲が良いのは自分だったのに置いていかれているようで不安だとかだったはず。

だから、俺は不安ならその旨を伝えればいいんだと言っただけだ。

友達以上にはなれないどうのこうのは聞き覚えがないけど…


「良かったね、おめでとう」

「うんっ」


嬉しそうに、幸せそうにしているなら過程はどうであれいいか。


「リン」

「あ!たぁくん!」


嬉しそうに彼が頷くと扉から彼を呼ぶ声が聞こえた。途端に破顔する彼。

花枝も呼んだ人物を見てみれば、その人も最近話したことのある人だった。

その人と会ったのも二日前で昼休みだった。

ご飯を買いに売店へ向かっていると、フラフラと歩き、時たま壁に頭をぶつけブツブツ何かを言っていた。

気味が悪く思いながらも話し掛けてみれば、俺を見た瞬間目を輝かせ相談に乗るように言われた。


取敢えず聞いて見れば、好きな人がいるのだが全く気付いてもらえず、尚且つ知らないとは言え理性を耐えるに耐えられない行動をされてしまい、どう接すればいいのか分からないとか。


心底相談に乗りがたい内容だったけれど見るに耐えない様子だったので、一度思いを伝えて意識させて見ればどうだと提案した。

ここは全寮制の男子校で同性の恋愛も多い。告白されたところで戸惑うことはあれど引かれることはないだろう。


そう言えば、早速明日伝えると意気込んでいた。


「あ、花枝じゃん。この前はありがとな!」

「え?もしかして、たぁくんも花枝君に相談したの?」

「“も”って…リンも?」


会話の意図が掴めないが、二人の間に俺という共通点ができ、何故か気恥ずかしそうにはにかみそうあっている。


よく分からないけど…









リア充爆ぜろ。



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