I’ve got a crush on you. 私にはルームシェアしている男がいる。 「綾華ちゃん、今日講義何時に終わる?」 シングルベッドの上で繰り広げられるこの言葉。 日付も変わり、深夜だ。仮にも恋人同士であるというのに、色気もムードもないなと思いながら、私は講義何々取ってたかなと考える。何を隠そうとも、この及川徹とのルームシェアをしている。 「今日は、4コマで終わるから買い物しに行こうかなって」 「なら俺もそうしよっかな」 「サボるなら来なくていいよ」 「いいじゃーん!綾華ちゃん!」 幼稚園、小学校、北川第一中学、そして青葉城西高校までの進路が同じだった徹とは、昔から親同士が仲良くって、よく遊んでた。大学に進学する際に、地元・宮城から東京に出るとなった時、お互いに心配だからと、一緒に住むと言う条件付きで出してもらえることができた。しかも、ルームシェアだから結構セキュリティの高いマンションに。 私たちは高校2年の時から付き合っていたけれど、両親たちは私たちの関係に気付かなかった。そのことに気付いてなかったおかげで、両親たちは私たちを一緒に住まわそうと言ってくれた。私たちにとっては、同棲させてくれと言おうと思っていたところだったから、ラッキーだった。 「久しぶりに岩泉くん誘って行こうかな」 「…何で岩ちゃんな訳?」 「結構私、岩泉くんと仲良いんだよ」 スポーツ推薦により某有名最難関私立大学に通う徹。 私は私で英語に特化した某有名難関私立大学に通う。 そんな私たちが、なかなか時間も合うことはなくって。デートすることもなければ、一緒に登校したりなんてこともない。正直、一緒に住んでるけれどそんなに甘々な雰囲気にもならないし、いいんだか悪いんだかだ。けれど、 「…なんかジェラシー感じるんだけど」 「何でよ」 「綾華ちゃんが俺を通してじゃなくて、岩ちゃんと交流があるって知らなかった」 まあ、同じクラスにもなったことないし、あまり私は岩泉くんとは話したりもしなかったけれど、大学のキャンパスが近いからだね。 そう徹に言えば、『俺も岩ちゃんと同じ学部にすればよかったなあ』と言う。 「…じゃあ、駅前のカフェで待ってるから。…一人でちゃんと」 「…オッケー。じゃ、寝ますかね?綾華」 「もう寝てるから黙って…」 私は抱きついてくる彼を払いのけて狭いシングルベッドの上で私の好きな体勢で寝る。すると、懲りもせずに抱きついてきて、耳元でいつもの言葉を囁く。 「今日も愛してるよ、…綾華」 ―――そして、深い深い眠りの中に。 |