ネタメモ | ナノ

2020/10/01 Thu

※オメガバースパロなので苦手な方は読んではいけません

(主人公=オメガ、高杉=アルファ)


主人公はずっと自分をアルファだと思っていたオメガ。
小さな頃から優秀で、かつアルファの多い家系に生まれたので自分の性別を疑わなかったが、15歳になったときに行われたバース検査でオメガと判明。
昔に比べてオメガに対する偏見はなくなっており、抑制剤も比較的安価で安定供給されるようになっているものの、ずっと自分をアルファと信じて疑わなかった主人公は大変なショックを受け、その反動からアルファという種を嫌うようになる。そもそも運命の番なんて馬鹿馬鹿しい、くだらない、俺は絶対アルファになんか屈しないで生きていくぞ、と決意する。

そんな中主人公は高校受験の試験日にはじめてのヒートを迎えてしまい、試験を受けられなかったことで本命の高校には行けず、銀魂高校へ進学することに。
高校では周囲に自身のオメガ性を気取られぬように振る舞ってきたおかげで、成績優秀、品行方正、眉目秀麗な主人公のことを周りはすっかりアルファだと思い込んでいる。
抑制剤やホルモン剤をうまく使うことでヒートは抑えられてきたし、周期も順調で、医学の進歩のおかげでヒートの周期と日数も昔と比べてかなり少なくできるようになった。だから今までそれで生活に支障が出ることもなく、極めて順調な学校生活を送れていた。

 (……という前置きを踏まえた上で、以下ネタ吐き出し)


 休み時間、なんだか校庭が騒がしいなと思った。
 次の授業が体育なのであろう女子たちの黄色い声が、グラウンドにさざめいている。教室の窓から外を覗いてみると、隣に並んだ沖田が「高杉が来るんだってさ」と呟いた。

「高杉」
「ようやく停学明けたらしいんで」
「……ふうん」

 同級生でありながら、主人公は高杉と顔を合わせたことがなかった。それは単純に、高杉が学校に来ないからだ。
 しかし顔を合わせたことこそないが、高杉と言えば銀魂高校きっての札付きの不良、カリスマヤンキーであることくらいは主人公も知っていた。というか、おそらく学校中のみんなが知っていた。高杉という男は有名人なのだ。
 そんな普通なら避けられそうな不良の復学がなぜこんなに女子の心を騒がせるかと言えば、高杉のそのカリスマ性と端正な顔立ちの他に、彼の性にある。
 ──高杉がアルファだというのは、目下の噂だった。
 アルファの多い進学校ならともかく、いわゆる"普通"の高校にアルファはそう多くない。優秀な人材の多いアルファは将来出世確実だし、そんな男を捕まれば未来は安泰。そんな打算的な下心から、女子らは色めきだっているのだ。

 そもそも、自分の性と言うのはむやみやたらと周りに触れ回るものではない。バース検査の結果の通知も本人とその家族のみに限られる。だから自己申告でもしない限り、他人の性というのは基本的にわからない。しかし「あの人って○○っぽいよね」という雰囲気は存在するもので、中でも「アルファっぽいよね」というのは比較的周囲にとってわかりやすいのだ。
 つまり、高杉は誰の目にも明らかなアルファだということだ。

 主人公は周りにはアルファだと思われているものの、その実はオメガだ。昔に比べて偏見や差別こそないが、いきなり突きつけられたオメガという札を主人公はまだうまく受け入れられていない。
 主人公はまだ恋をしたことがなかったが、自分のオメガという性がちゃんと自分で恋の相手を選ぶ権利すら与えてくれないかもしれないと思うと、自身を呪わざるを得なかった。
 「運命の番」という都市伝説は、いまだに残っているのだ。
 そんな相手に出会う人間なんて確率的にはほんのわずからしいが、それでも出会ってしまったらお終いだ。その相手を自分が気に入るかどうかとか、好きかどうかとか、すべてを抜きにして"運命"だからと自分の意思とは関係ない相手と番うことを納得しなくちゃいけなくなる。意思が性に左右されるなんて、そんな馬鹿げた話があってたまるか。

 と主人公が目を細めて校庭を眺めていると、真っ黒な髪を陽に晒した男が門に現れた。明らかに遅刻の時間だというのに、彼は焦ることなく校内に足を踏み入れる。
 その瞬間、波が引くように黄色い声がさっと消えた。
男はゆっくりと歩く。凱旋する王のように悠然と。主人公は奥歯を噛んでそれを見守る。
 ──アイツは"本物"のアルファだ、と思った。
 抑制剤を打っているからアルファもオメガも本人からの申告がない限り基本周囲が判別できるものではないが、それでも彼ははっきりと、普通とは違う異様な雰囲気を纏っていた。なるほど、これが。

 高杉は校庭の真ん中を突っ切って校舎に近づいてくる。高杉のその泰然とした態度はアルファ故のものか、それとも彼が彼である所以なのか。ここまでくるともはやアルファ性を見せつけているのではないか? と思えるほどの泰然自若とした態度と圧倒的なオーラ。
 筋違いとはわかっていても、自分にないものを簡単に手にしている高杉に湧き上がる苛立ちを抑えられず、主人公が席に戻ろうとしたときだった。

 高杉がまっすぐ、こちらを見上げた。
 こっちが校庭にひとり佇む高杉を見下ろすのとは訳が違う。こんなに距離があって、しかも窓越しで、他に高杉を見ている生徒は何人もいるのに、それでも主人公は確信した。コイツは俺を見ている、と。
 明らかに、高杉と目が合ったと思った。
 片方を眼帯で覆った隻眼は、ふたりの間の距離なんてものともせずその光を真っ直ぐに届けてくる。恐怖にさえ似た感情が一瞬主人公を襲う。あんなに真っ直ぐで、理性的な熱情を孕んだ瞳は今まで見たことがなかった。

「──ッ!?」

 その瞬間だった。腹の奥底から溶岩のような熱の塊が内臓を押し上げてきて、一瞬で頭を沸騰させた。まぶたの裏側がチカチカとして、身体から汗が噴き出す。膝がガクガクと震えて、思わずその場にうずくまった。全力で疾走したあとのように激しい動悸がして、口の中がカラカラに乾いたかと思うと、じゅわりと唾液が溢れてくる。久しく忘れていその感覚は、実に三年ぶりだった。
 ──ヒートだ。それも、突発的な。

「うそ、だろ……なんで今、」
「お、おい、大丈夫かィ?」

 いきなり崩れるように膝をついた主人公に驚いて沖田が肩に触れようとした刹那、大袈裟なほど身体を震わせた主人公はその手を振り払った。

「さわるな!!」
「……」
「あ……、」

 驚いて沖田は手を引っ込めた。主人公が人に向かってそんな態度を取るのは初めてで、教室にいたクラスメイトたちもギョッとしてふたりを眺める。主人公は申し訳なさそうに眉も寄せるも、余裕がないのか只々俯いた。肩で息をする主人公は見るからに辛そうで、目には涙の膜が張り、顔は紅潮していた。そしてほのかに感じる甘い香り……。沖田はそれらが示唆する可能性に、目を見開いた。

「え、嘘だろ、お前……」
「──なんだこの"匂い"!!」

 そのとき血相を変えて教室に飛び込んでいたのは銀八だった。珍しく本気で焦った顔をしている。見ると廊下の方がにわかに騒然としていて、どうやらベータの生徒にも感じ取れるほどのフェロモンが垂れ流しになっているらしい。廊下から覗いてくる生徒たちに「おいテメェら散れ!」と銀八は怒鳴って、教室の入り口から声をかけた。

「沖田! 保健室まで運んでやれ!」
「で、でも……」

 沖田が手を伸ばそうとすると、主人公は逃れるように身を小さくする。過敏になった皮膚に触れられたくないらしい。
 他の生徒も、見てはいけないものを見たような顔をして立ちすくんでいる。誰かがゴクリと生唾を飲んだ音がした。

「……あーどうすっかな、土方……いや新八、運べるか?」

 窓際にいる主人公には近づかない銀八が苛々と己の髪をかき混ぜていると、

「あーもー! なにやってるアルか男共は!」
「……うわっ!?」

 痺れを切らしたのは神楽だった。言うが早いが主人公を引っ張って抱きかかえ、疾風のように教室を飛び出す。

「……! 悪い神楽、助かった。俺は他に始末付けないといけねーことあるから、そいつ頼むわ。医務室に薬あるはずだから!」
「アイアイサー!」

 

 神楽が戸棚の薬を探している間、保健室の硬いベッドに横たわりながら、主人公は未だ引かぬ身体の熱に熱い息を漏らした。カタカタと小さく体が震える。ぐじゅ、と後ろが濡れる感覚が気持ち悪い。情けなくて、涙が出そうだった。
 今までこんな突発的なヒートが起こることなんてなかったのにどうして……いや、そんなの理由はとっくにわかっている。高杉と目が合って、それで──。

「……さい、あく」

 これ以上のことは考えたくない。主人公はベッドの中でさらに身体を丸めた。辛くて涙が出るし、奥歯は食いしばりすぎて擦り減っていそうなほどだ。それもこれも全部アルファのせい、そして、忌々しい自分のオメガ性のせいだ。やっぱりアルファなんか嫌いだ。
 目が合っただけでヒートを誘引したアルファなんて、今までいただろうか。いや、いなかった。今まで自分にオメガを自覚させる人間など、いなかった。

 戸棚を探っていた神楽が、「あ、あった!」と声をげた。
 とりあえず薬を打たないと、と主人公が熱を持った身体を起こしたときに、またぐじゅりと後ろから溢れた液が下着を濡らす。意思とは関係なく、身体がアルファを受け容れるための準備をしているのだ。忌々しい。
 そもそもなぜ、あんな風に遠くから目が合っただけで、こんなことに。

「……」

 ──その瞬間、ふと「運命」二文字が脳裏を掠めて、主人公は頭を振った。



〜〜〜


……というようなオメガバースパロ。
ほほ導入だけで終わってしまいましたが、紆余曲折あって最終的には高杉とくっつく話が書きたいです。

こういうパロディものってかなり人を選ぶと思うので、いったんネタメモに投げて満足しようかなと思います。
あとオメバの設定をあまり理解できていないというのもあり……。
短編等にしてアップするとしたら、別ページをつくるか、苦手な方に被弾しないように鍵付きにする等しようと思っています。

銀八が主人公に近づかなかったのは、自分もアルファだから。
攘夷四天王はなんとなくアルファっぽいなというイメージ。

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