ohanashi | ナノ

「ただいま」

俺と名前が恋人になってから4年が経ち、名前が俺の苗字を名乗るようになってから1年が経った。名前はとっくに会社を辞めており、今は俺が名前の分まで働いている。面倒な事も沢山あるが、中々やりがいのある仕事をさせてもらえる会社に就職する事が出来て良かったと思っている。

「おかえりなさい!」

名前は毎晩俺が帰るまで晩飯を食べずに待っててくれている。先に食べてもいいと言ってあるが、どうしても譲れないらしい。



「毎日こうやって出迎えられると、本当の夫婦みたいだな………夫婦だが」

スーツのジャケットとマフラーを俺から受け取った名前は俺の言葉に反応したのか、林檎のように顔を赤く染めた。昔から恥ずかしがると顔を赤くするのは今になっても変わっていない。本人は嫌な体質だと言っているが俺は可愛いと思う。

「もう!何言ってるの若ったら」
「名前だって俺が就活している時に俺のリクルートスーツを脱がせながら"なんだか夫婦みたいだね"って言っただろ…忘れたのか?」
「え!?そうだっけ…?」
「しかもまだ付き合っていなかった時だ…あの時の名前は無自覚で物を言うから腹立たしい事もあったな」
「む…………………あ、若!!ご飯にする?お風呂にする?………それとも…私?」
「夕飯」
「そ、即答…」

悔しそうな顔をした名前が話をすりかえるようにして何か言ってきたが、スルーする。名前がいきなりこんな事を言うはずがない。同じマンションに住んでいる忍足さんの奥さんにでも吹き込まれたのだろう。よく一緒に昼飯を食べると言っていたしな。

ご飯といえば、名前の料理の腕はルームシェアを始めたときとは比べ物にならなくなった。当時はコンビニ弁当の方が美味いと思いつつ名前が作ってくれた料理を食べていたが、今となっては名前の料理以外は食べたくないと思うくらいだ。こんな事、本人の前では絶対に言わないが。

「じゃあ次はお風呂にする?それともわ…」
「風呂」
「………」

夕飯を食べたあと、懲りずにまた言ってきた名前の質問に俺はまた即答してやった。かといって名前を選べば、恥ずかしいのは名前自身なのに、その事には気付かないのだろうか。

「仕方ないな…残り物、もらってやるよ」

風呂上りに、ソファーの上でむすっとしながら本を読んでいた名前の手を引っ張り、寝室へと連れて行く。「真っ赤になるくらいなら言うなよ」恥ずかしそうにする彼女に向かってそう言ってやるのも忘れずに。

そろそろ家族が増えるのも悪くない、と俺は思う。



They lived Happily ever after....!