ohanashi | ナノ



8月2日に坂上さんのサイトで行われたチャット大会に参加してまいりました!夏に関する決められたテーマでその場で書かせて頂きました。2つしか書けていないしテーマの良さを生かしきれていない…!その場で書く難しさを改めて実感…精進したいです!



★柳くん@プール

「背中に日焼け止めを塗ってもらおうと思っていたのに友達が先に行ってしまった?」

クラスの友達と一緒にプールに入って遊ぼうと思っていた私は忘れ物をしてしまったので、一旦ホテルに戻ってから屋外プールの近くにあるテントに行くと、待っているはずの友達はいなくなっていて、クラスメイトの柳くんがちょこんと座っていた。

「もし良ければ…だが、俺が塗ろうか」
「え、ホント?」
「1人では大変だろう?それに、今日は日差しが強いからしっかり塗らなければ肌が焼けてしまう上に、入浴の際に痛みも感じてしまう」
「じゃあ…お願いしようかな…」

他の人だったら絶対に嫌だったけれど、やましい事とか全然考えてなさそうな柳くんなら大丈夫かな…なんて思ってしまった私は、彼のお言葉に甘えて、日焼け止めを塗ってもらう事にした。

「ち、近いよ…!」

体育座りをした私の後ろで、柳くんがゆっくりと丁寧に日焼け止めを塗っていく。日焼け止めが冷たいのは充分分かっているのに、柳くんの手が私の背中に触れるたびにびくりと身体が軽く揺れてしまう。自分で塗るときも冷たいはずなのに、おかしいなぁ。

「何を言っている…近づかなければ塗れないだろう。ああ、そういえば…」

塗っている事に意識を向けさせないためだろうか…私が近いと言った後、柳くんは私にどんどん話を振って来てくれた。それでも…やっぱり、耳の近くで柳くんの低い声がするのが恥ずかしくて、私は横に向けていた顔を前に向けて、プールに入っている生徒達を見つめた。

「…前を向いてしまうのか?」
「えっ…だって…」

視界に柳くんの細くて長い指がちらちらと見えて、思わず横を向いてしまった。「前を向かれると、少し寂しい」そんな事を言われてしまったら、柳くんのほうを向くしかないじゃない。

「…これで終わりだ。塗り残しは無い」
「あ、ありがとう!ごめんね…柳くんもプールに入りたかったはずなのに」
「俺はこの炎天下の中プールに入るのが少し辛かったから、此処にいたまでだ。問題は無い」
「…そっか」
「………」
「………」
「…どうした?」
「さっきから友達がどこで泳いでるのか探してるんだけど…分からなくて」
「確かに…見当たらないな」

困ったなぁ…と思っていると後ろにいた柳くんが立ち上がり、私の隣に腰を下ろした。

「それでは…お前の友達が此処に来るまで、俺の話し相手をしてくれないか」

そう言ってやさしく笑ってくれた柳くんを見て、プールで遊ぶのもいいけど、こうやって日陰でのんびりお話するのもいいなぁ…と思ってしまった。

「さっきあいつとすれ違ったのだが…具合が悪いからホテルで休むと言っていた。それと先程B組の生徒が言っていたが、今は向こうにあるウォータースライダーが空いているらしいから、今の内に行った方がいい」

私がテントに戻ってくる前に、柳くんが友達にこう言っていたことを、私が知る事は無かった。


★ジャッカル@星空

「ぎゃーーーーーー!!!!無理ッ!!無理無理!!」
「おい、耳元で叫ぶな…」

夏合宿の定番中の定番、夜の肝試し。くじびきでペアを決めた結果、マネージャーの私は運良くジャッカルくんとペアになった。他のメンバーは怖がりな私をからかったり、うるさいと一刀したりするような奴等ばっかりなので、ジャッカルくんで本当に、本当に良かった。

「だって今…人魂が見えたよ?」
「おそらく人工のヤツだから、大丈夫だ」
「ジャッカルくん…暗くてあんまりよく見えないけど、頼りにしてるからね!」
「暗くてあんまりよく見えないは余計だろ…!」

何だかんだ言って彼は優しいので、私がギャーギャー言っても本気で怒る事は無かった。

「あ…あったよ!お星様!」

一本道の突き当たりに置いてある星の形をしたペンダントを取って戻ってくる…つまり、ペンダントは肝試しの最終目標だった。
ほら、取ったけど何にも起こらない。そこまで怖がる必要は無いだろ?」
切り株の上に置いてあったペンダントを取ったジャッカルくんは私の首にそれをかけた後、私の前に手を差し出した。訳が分からず首をかしげていると、ジャッカルくんは頭をポリポリとかきながら「その…怖いなら繋ぐか?って事…なんだけど」と私にしか聞こえないような声で言った。

「えへへ…ありがと」
「ああ」

不憫すぎて知られていないけど、ジャッカルくんは優しいし、人前じゃない所だとたまーに紳士な時もある。そんな彼の一面が、今、まさに現れていて。

「!!!!!!!!!!!??」
「お、おい…落ち着け!」
「て、手が…!手が…」

ジャッカルくんの手を取ろうとしたその時、私とジャッカルくんの間にある僅かな隙間に、白くて細長いものが落ちてきた。それは、肘から先が切り離されている、人間の手のように見えて…腰が抜けた私はその場に勢い良く座り込んでしまった。お尻が、痛い。

「落ち着け、ニセモノの手だ」
「っ…も、もうやだよぉ…帰りたい…」
「ほら、泣くなよ…あ、」
「…へ?」
「上見てみろよ、流れ星だ」

涙目になりながらもジャッカルくんに言われたとおり、夜空には無数の流れ星が流れていた。

「えっ…何これ…すごい!」
「お前が転んで尻もちつかなかったら気付かなかったかもな」

そっと、頭を撫でられて私の意識は自然と、ジャッカルくんの方へ向く。

「俺と組んでくれてありがとな…お前とペアを組めなかったら、この流れ星、見れなかったかもしれないし、良い思い出になった。お前怖がりだけど、見てて楽しいし…ホント良かったよ」
「ジャッカルくん…」
「帰る前にお願い事しとけよ。俺はどうするかな…」

私は流れ星にお願い事をする前に、流れ星のようにジャッカルくんに落ちてしまったのだった。


20130805