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「先程、タナカ電気様からお電話いただきまして、社長とお会いしたいとのことでしたので、来週火曜の14時から仮押さえ致しました」

「わかった」

「それと来月の新製品リリースですが、広報部長から、メディア向けのPR会見に出ていただけないかと連絡が」

「わかった。リリース日は他の予定は極力入れないよう調整してくれ」

「かしこまりました」

都心に構えたオフィスの最上階の社長室。
窓際に座った彼はタブレットを眺めながら、秘書である私が伝える連絡事項を確認していく。

「本日の連絡事項は以上です」

「わかった。ちなみに今日、この後は?」

「今日はもうご予定はありませんので、お帰りになられても大丈夫かと…」

そう答えると漆原社長は不機嫌そうに小さくため息を付いた。

「俺の予定ではなく、君の予定は?」

「私は自席に戻って定時までは残務をする予定ですが…」

「その残務の中に、急ぎの仕事は?」

そう言いながら、漆原社長はタブレットの電源を切って机に置くと、立ち上がって私の元へ歩み寄ってくる。

「納期が迫っている業務はありませんが…」

「さすが、我が秘書」

腰に手を回されると、強引に身体を引き寄せられ、そのまま漆原社長の腕の中に抱き締められる。

骨張った手が頬を包み、スリスリと親指が撫でるが、その優しい手とは裏腹に、私を見下ろす瞳が獲物を捉えた獣のようで、早く立ち去らねばと本能的に強く思う。

「私、戻ります…っ」

「急ぎの仕事はないんだろ」

「ひ、秘書課の部長に叱られます」

「急な仕事を頼んだと、後で伝えておくよ。ほら、君のせいで、こっちは急を要する」

そう言いながら、漆原社長は硬くなりかけている下半身を、抱き締めた私に押し付けた。
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