ジャックオランタン
「で、これはどういうこと?」
アカデミー主催の文化祭に綱手様が乱入…いやいや、協力したせいで任務のない上忍から下忍までハイテンションって勘弁してヨネ。
周りに溢れる声をハイハイと頷いて纏めていたらあっという間に夜。
溜め息ばかり吐きながらも愛しい彼女の待つ家に帰ってみたら…コレだ。
目の前の彼女に問い詰めるも曖昧な笑いしか返ってこない。
彼女の隣…即ちキッチンには…
南瓜、カボチャ、かぼちゃ…
橙色に溢れていて落ちそうなくらい。
それも不細工に切り取られていて、『何か』を作ろうとしていたみたいなんだけど。
黙ってそれを眺めていると、彼女が、か細い声で呟き始めた。
「ほら、今日…10月31日、でしょ?
それでハロウィンのかぼちゃといえばジャックオランタンかなあと思って…」
それを聞いて思わずまた、溜め息が零れた。
元々不器用な性格な彼女。
クリスマスにはツリーの飾りつけをするって言いながら出来上がったそれを見ればまるで七夕の短冊飾りのようだった。
まさか性懲りもなく、しかも今度は見よう見まねでジャックオランタンなんてものを作ろうとするなんて…。
無言で南瓜を眺めていると、俺の態度を見て、急に罪悪感が芽生えたのか、次に聞こえて来たのは消え入りそうな声の「ごめんなさい」。
あー…もうそのしぐさに俺が弱いの知ってるデショ?
「もう、いいから。それで、ジャックオランタンはいいんだけど…」
まさに『?』を浮かべている彼女の顔に吹き出しそうになりながら続ける。
「とりっく おあ とりーと?」
途端に『あっ!』という表情を浮かべてる彼女に…俺は笑いを堪えながら手を出してみる。
「ごめん…お菓子忘れた…」
彼女らしすぎて、もう笑いを堪えることが出来なかった。
「そっか。忘れちゃったんなら仕方ないヨネー。」
その言葉に安堵したのか彼女の頬が緩んだ…から、思いきり引き寄せて抱き締める。
一瞬戸惑いながら俺の胸に収まる彼女。
そのまま耳元に口付けて、囁く。
「お菓子がないなら…イタズラしてもいいってことデショ?」
あ、顔真っ赤。全く可愛いんだから。
「じゃあ、寝室行こっか。
俺は明日任務休みだしー。」
これから先どうするかって?
それは俺と彼女だけの秘密、デショ?
愛しい彼女に口付けを一つ落として。
そのまま俺は彼女を抱えるように寝室へと続く扉を閉じた。
=fin=
「happyHalloween!2011」
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