行方不明!?
「ねえ、園子。」
「んあ?蘭?
どうしたのよ慌てたりして。」
言われてみればクラス中がなんだから騒がしいというか、慌ただしい。
どうせ大したことじゃないんだろうなと想いながら、手元のポッキーを一本口に運ぶ。
…と、箱ごとポッキーを取り上げられてしまった。
「もう!
それどころじゃないんだってば!」
興奮しているのか、自然と大きくなっていた蘭の声が響く。
「魅月が居なくなっちゃったのよ!」
蘭の声はとうとう怒鳴り声となってクラス中の注目を浴びてしまい、あたしは思わずくわえていたポッキーを床に落とした。
「は?どういうこと?」
次の授業はとてもじゃないけど授業にならなかった。
普段真面目な先生ですら落ち着かない様子で教壇をうろうろと動き回ってる。
生徒に至っては、最早ひそひそ話どころかいくつかのグループで普通に会話が繰り広げられていた。
「魅月ちゃん…大丈夫かな…。」
泣きそうな顔をしてるのは明日香。
「大丈夫よ。
あいつに何かあったら…
鈴木財閥が黙ってないんだから。
しっかりしなさいよっ!」
背中をぽんっと叩けば、落ち着きを取り戻してきたみたい。
蘭はそんな様子を見ながらずっと腕を組んで考えこんでるみたい。
蘭、あんたそれじゃまるで仁王様だわ…。
…しっかし、新一くんもこういう時に役立たずよね。
蘭を筆頭に「どこに隠してるのよ!?」って怒鳴り混んだ生徒も多数いたけど、責めてみても知るそぶりもない。
これだから男ってやつは…。
魅月もなんでこんなやつがいいのかしらね。
騒がしい1日すぎて、気がつけばあっという間に下校時刻が過ぎてしまってた。
遅くまでの捜索は未成年には危険だと判断して今日は各々帰宅することにした。
蘭は新一くんを睨み付けてるし、明日香は涙目で携帯を握りしめたまま離さない。
何となく気まずい空気の帰り道。
「俺、こっちだから…」という新一くんの一言を合図に皆が解散してしていった。
その夜。
帰宅してから、1人でいるのが不安だという明日香が蘭を連れて一緒にあたしの家までやってきた。
軽く三人は入れるバスルームで、蘭は髪の毛をすすぎながら、明日香はフローラルの入浴剤をいれた湯船に浸りきっている。
あたしはひとりひとりを見つめながら、バスルームを見渡すとゆっくり考えをまとめていた。
こんな単純な計画でありながら、目撃者がいないなんてあり?
すると、入浴中には珍しくお手伝いさんがあたしを呼びに来た。
「園子お嬢様、お電話で御座います。」
大急ぎでバスローブを羽織って電話に出てみれば、そこには今日1日探し続けていた魅月の泣き声。
その様子に気づいた蘭も明日香も慌ててバスローブを羽織るとあたしの元に向かって走ってくる。
「魅月ちゃん?どうしたの?」
明日香は電話口の横から何度も名前を呼ぶけど今は魅月の口から話が聞ける状態じゃないみたい。
泣きじゃくって話のほとんどを聞き取れなかったけど、どうやら新一くんの家を出ていくってことだけは何となく伝わってきた。
新一くんのおじ様とおば様が誘ってくれたからどこに行くのかは解らないけど、いってみようと思うって言っていたから。
あの2人が一緒にということだから、あたしたちはもう止めない。
「お土産待ってるからね?」
なんて涙声を隠しながら電話で話してるのは明日香。
「帰ってきたら新一吹っ飛ばす!」って遠巻きに気合いをいれてるのは蘭。
「ねえ、魅月。」
「なあに?園子。」
すうっとおもいっきり息を吸って…
「そのまま帰ってこなかったら許さないんだからね!」
珍しくあたしは怒鳴った。
電話越しの魅月がびっくりしてるみたいだけど関係ない。
「新一くんのおば様とおば様のところもだけどね、あんたの居場所はここにもあるんだから!」
でもこれだけは絶対伝えなくちゃいけないから伝えなくちゃね。
「あんたの居場所、忘れんじゃないわよ!」
……………
行方不明!?≫
あとがき
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