「こりゃ酷ぇな」

「……あぁ、そうだな……」



目の前にあるのは灰と化した屋敷。

それは元は俺達の同盟を組んでいたファミリーのもの。

俺達も実際に入ったことはあるが、一般から見たら立派な屋敷といえるだろう。

まぁ、俺たちの屋敷と比べると小さいけれども。

そのファミリーが過ごしていた屋敷は、ある人物に潰され、灰と化して俺達の目の前にある。



「此処のボスとその奥さん、いい人だったんだけどな」

「……リボーンの調査では裏切ろうとしていたらしい」

「…聞いたぜ。
 だけど、あの人たちの親切心が偽りであったとは思えねぇ」

「それでも、裏切ろうとしたのは本当だよ」

「あぁ…分かってる」

「…これで、10件目だ」




ここ最近、同盟ファミリーが潰され続けていた。

それも、決まって裏切りを企んでいたところばかり。

正直、ボンゴレとしては助かっているが、しかし同盟ファミリーを潰すほどの実力を持つ人間を野放しにできる筈もなく、こうして捜しているのだ。

焼跡を一目してから踵を返し、停めてある車へと乗り込む。

一緒に着いて来た武が隣へ座り、テーブルに置かれていた資料を掴むと読み始めた。

俺は脚を組み、寝不足気味な身体を休めるように背凭れへ寄りかかった。

此処の所、この事件ばかり起きているから寝るにも寝れない状況が続いている。

それに加えて同盟が裏切り行為をするやらなんやら、書類仕事がなんやらかんやらと色々と面倒な事ばかり起こっているのだから、寝る時間など作れるわけがない。

少しでもいいから休もうと、目を瞑った。

10分くらい経ってから武は資料を読み終わったのか、それをテーブルへと置いて口を開いた。


「で、その犯人とやらの目星はついてるのか?」

「一応、可能性のある人物はあげたんだけどね、」

「どれもハズレか…」

「うん……」


可能性のある人物は挙げたものの、どの人物も一連の犯人程の力は持っていない。

一からの捜索にボンゴレも手を焼いている状態なのだ。


「しっかし、何で俺らよりも先に情報を掴んでんだ?
 ボンゴレの情報を上回るものなんて無い筈なのに」


武が不思議そうに言った。

確かにボンゴレの情報は他のファミリーに比べて情報を仕入れるスピードが違う。

しかし、それはファミリーとしては、だ。

こちらの世界では“情報屋”というものがある。

凄腕の者であればボンゴレの情報部に匹敵するであろう情報を持っているかもしれない。

あくまでも“推測”ではあるが。


「何にせよ、やった奴を捕まえなければならな……ッ?!」



―ガンッ!!

―キキーッッッ!!!!!!



何かがぶつかる音と、車が停止する音。

停止した衝撃により前のめりになるのを何とか押さえ、車から降りる。

降りた車の前に一台車があり、その前には女が倒れている。



「…ッ!!」

「なっ!?
 大丈夫か!?」


武が走って女に近づいていく。

それに続いて行けば、女は何かを抱きしめている。

小さい、何かを。


「…子供、?」


腕に納められているのは五歳くらいの子供だ。

顔立ちも似ていない為、親子という可能性は低いだろう。

ということは、飛び出した男の子を庇った、ということか?

良く見れば、女の方は日本人のようだ。


「……ボンゴレに運んで治療しよう。
 大至急だ!」

「…了解、ボス」


武に指示を出すと、直ぐに動いてくれた。

二人を車へと乗せ、車は直ぐにアジトへと向かった。








助ける必要など、ないのに。

(俺の超直感がそういっているんだ、)
(助けなかったら後悔すると。)









――――――

イタリアにある建物が全焼することなんてあるのだろうか。




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