悲しみの記憶
記憶に残る貴方は何色だっただろう。
そう、例えるなら誰かの頭の中にある記憶をこっそり覗かせてもらっているような感覚なのだろうか。
目の前で倒れる貴方。
身体から血を流し、それでもセピア色に染まる貴方。
彼は最後に笑って私に生き延びろと、そう言った。
貴方が生きていないのにどうやって生き延びろというのか、私には理解不能だったけれど。
セピア色に染まった彼はその綺麗な顔で微笑み、そのまま息を引き取った。
後に私はそれを“過去”と自覚するけれど、その頃はまだそれに気付けなかった。
いや、気付いていたけれど気付きたくなかったのか。
やけにその光景は身体に残っていて、何度も何度も私に同じ光景を見せ続ける。
悲しい記憶を。
思い出したくない記憶を。
苦しい記憶を。
痛々しい記憶を。
頭が反応し、心が反応し、身体が反応し、私の中の全てが反応する記憶を。
ずっと、ずっと、何度も何度も繰り返し見せ続ける。
その度に私は痛い、痛いと泣き叫ぶのだ。
最愛なる、貴方に。
泣き叫べるならば苦労などしない。(その相手は、もう、)
(此処には存在しない。)
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