近くにあった細道に入ってみると、そこはとても暗かった。

何か、光りになるようなものが無ければ動けないほど真っ暗だったので、仕方なく携帯を取り出し、ライトを付けて歩き出した。

此処を無暗に歩くより誰かに出口を聞いて出た方がいいのだろうか。

何せ、数歩先は闇。

ライトが無いと歩けないほどなのだから、何処をどう歩けばいいか分からない私にとって出口に着くまで相当な時間がかかる。

近くに人の気配は無い。

ただ、50メートル程離れた所に数名の人がいるようだ。 

その人達に出口を聞けばいい。

子供の足だと遠いそこまで、少し急ぎ足で向かった。



気配周辺まで来たが、近くには気配は1人しかいない。


(…消えた?)


いや、でも、何故、先程まであんなに気配があった?

ほんの、ついさっきまで。

まるで、誰かをおびき寄せる為に気配を消していなかったような……―――

まさかっ、!

はっとして元来た道を戻ろうとする。



――しかし、遅かった。



ガンッと音がする程に壁に叩き付けられる。


「っ……ゴホゴホッ…」


背中を思い切り打ち、背中に激しい痛みと共に咳が出てきたが、今はそれを気にしている場面ではない。

目の前にいるのは黒い服を纏う男。

その男はにやり、と笑って私を見た。


「お嬢ちゃん、どうして逃げようとしたんだい?」

「――……」

「お嬢ちゃんは、どこから来たのかな?」

「―――…」

「何とか、言えよ!!!!!」


声が出ないから黙っていたら男にはそれが気に障ったらしく、頬を叩かれそうになった。

反射的に目を瞑った。

けれど、痛みはいつになってもこない。

目を少しずつ開くと、誰かの手が男の手を止めた。


「子供に手を挙げるなんて、おかしいと思わない?」

「お前はッ!!
 ボンゴレッ!?」


ボンゴレ、?

浅利?

誰だ?

男はそう叫んで私を離し、そのボンゴレとかいう人から離れた。

私が疑問に思う中、男は素早く私を自分の後ろに隠すと何かを取り出した。

それは、黒い何か。

男は私の目を手で隠し、パシュッという音がした後、抱きしめてきた。

その後の浮遊感から抱き上げられ、何処かに向かって歩いている事が分かる。

暖かい。

ここまで暖かい温もりを感じたことはあっただろうか。


「大丈夫?」


暖かいその声に、思わず涙が零れた。









暗闇に一筋の涙。

(こんなに暖かい温もりなんて知らない)
(とても暖かいひと。)














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