〇無題 フェストゥムとの戦闘後、まるで何かの誓約のように総士は決まってこの言葉を口にする。 「一緒に戦ってくれるな?」 シナジェティック・スーツを脱ぐ間もなく手を取られ、連れて行かれたのは既に見知った場所となってしまった、メカニック用の仮眠室だった。 照明を点けることなく扉を閉められ、背後から抱きしめられる。脱力感に思わず漏れてしまった溜め息を、総士は気に入らなかったらしい。 肩を捕まれこちらに振り向かされかと思うと、全てを奪うような接吻を仕掛けてきた。 頬に添えられた指に力が込められ、微かな痛みを伴っていく。 「…おまえはここにいるのか?」 それに抵抗する理由もなく、咥内を自由に翻弄させている中、息をつくように吐かれた質問を一騎は聞き逃すことはなかった。 「ああ……ここにいる」 頷きながら、一騎は言った。 総士がそれを望むなら、自分はいくらだって存在し続ける。しかし、それを伝えたところで、総士は自分の話など聞きはしないのだ。 拒絶されながら、ただひたすらに求められる。 それは、彼を一度拒否したことに対する弊害なのかもしれなかった。 「一緒に戦ってくれるな?」 目の前にいる自分と共にいる気などないくせに、と一騎は内心でごちる。 「おまえが、望むなら」 同時に腕に抱き込まれる。ぞわりと背筋を駆けた悪寒は、体を期待に悸かせた。 「僕が望むこと………わかるだろう?」 くすりと笑いながら、耳元で囁かれる。 総士の命令とも呼べる要望が体へと浸透していくより先に、そろりと服に忍ばせられた指先が体に火を燈すより先に、一騎は思わず「欲しい」と総士に微笑んでいた。 [終] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 人様の目の前で創作したもの。 戻る |