〇必然的カテゴリア




※注意 軽い天地ネタバレ





「ねえ、一騎に会わせて?」

人間は言葉と表情というツールを使用して、他人と意思の疎通をすることも、知っている。
だからこそ、操は微笑みながら、自分の要望を口にした。しかし、相手はそれにほだされることなく、目の前の操を見据えている。自分達の提案があっさりと受け入れられるほど、彼等は単純で柔軟な作りをしていないことも分かっていた。

「皆城総士の記憶の影響か」

表情も声色も一切変えずに、真壁史彦は呟いた。

「少し違う。でも大体合ってるから、正解」
「何だそれは」

言葉の通りだよ、と操が言うと、史彦は怪訝な顔をした。
皆城総士によって一騎という存在がいることは知っていたけれど、詳しくは知らない。ミールは俺達にとって必要だと判断した知識しか共有しようとしないからだ。空は美しいものだということは、俺達には伝わらない。
操が知っているのは、データとしての性格と、見た目だけだった。人形のような一騎が、操の中にいた。

そういえば、表情は相手の性格を判断するものでもあったことを思い出す。
表情という概念は外因によって与えられたものであり、操にとって、空気を掴むような、捉えようのないものだった。ただ、今は、この人間は厳格で、感情をあまり表に出さないのだろう、と操ははっきりと感じることができた。
閉鎖的な空間に、一人の人間と向かい合わせで座らされる。何処からか見分され、分析されているのだろうか、と思いながらも、俺達と皆城総士の間柄と同じようなものだと思えば、抱いた抵抗すら消えていった。

「俺、一騎に会いたいんだ」
「…どうして、一騎に会いたい?同化でもする気か」
「違うよ!ミールの意思を伝えるのは俺達の総意だけど、一騎に会いたかったのは、俺だけの意思。だから、ねえ、お願いだよ」

一騎のお父さん、と呟いた言葉に、目の前の人間・史彦は片眉を上げた。
その反応に、操は後悔する。
読心術は人間にとっては脅威でしかないのだと知っていたのに、使ってしまったことを。

「ごめんね。君達でいう会話が、俺達にとっては心を司ることだから」

心を読むのは業ではなく、性質だ。人間には風が見えず、俺達には見える、例えるなら、ただそれだけのこと。
わざわざ言葉で伝えなくてはならないなんて面倒だと思いながら、操は謝罪の意を口にした。同時に、嬉しさが込み上げてくる。
真壁史彦は、操が一騎と会うことを決して否定はしていないのだ。そして、彼は今、とりあえず会わせてみようと称える民意と、自分の息子を渡したくないという親心の狭間にいる。
操は自然と頬を綻ばせながら、質素な机に頬杖をついた。

早く会いたいな、一騎。おまえだって、そうだろう?

操は心の中で、史彦が決断するのを指折り数えながら、未だ見ぬ一騎に思いを馳せていたのだった。



[終]



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操は純粋に画策する存在だと思う。
純粋過ぎて自分の欲求に忠実




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