89 | ナノ
シンタロー

!は○□を殺すべきでは無かったのだ。百年の歳月に?は人を止めてしまった。美しかった。美しかった。美しかった。美しかった。さよならと言うべきなのかもしれない。誰よりも誰よりも、美しかった。美しかった。愛していた。
砂時計を割れば砂が床に広がる。傷は広がって赤い乞いが響く。時計の役目は無くなり職人は腕を落とす。充電器を首に巻き付け梁にかけて針を落とせば地獄を叩く。警察の声は徴収軍人へと代わり銃撃戦が各地で巻き起こり肢体を投げ出す医者が遺書を書く。筆は折られインクが叩き割られ原稿用紙は袋綴じ。パソコンの電気がカクテルへ流れ出し舌が痺れて閻魔が困る。意味もなく折られたスクラップの飛行機を使って羽を作り出す。愛言葉の希薄さは気迫を帯びて合言葉へ代わり世界平和を願う宗教軍隊が高らかに歌う。サーカスの門を開ければボーリングのピンで輪投げをする教師が教鞭を振り回す。木を狩る狩人は雪崩に巻き込まれて崖下で白くなる。干渉は司会を巻き込み狂った鳩を引っ張り出した。テレビジョンの画面を辞めた硝子板はプラスチックを頬張る。色彩を戻す視力を吐き出した海月に滑稽と笑う鮫が網を編む。鯨が遠吠えして捕鯨船が先端を突き破った。文豪を謡った女子高生を殺す紫外線。止めどない強者を無為殺戮して猿が身投げを披露する。警戒する英雄の像から臓器を引きずり出して分厚い押し花。街灯に外套をかけて頬を染める少女の綺麗なこと。

「百年がまた経った」

真珠貝が割れて血を流す。百を五回は迎え入れ誰と喋るでもなく花を殺す生業をした。軽快に死を拒む時代を星に変えてこっこっと卵を割る。悪性の人物へ向かって罵倒する男は画面越しに背中を押す。包丁を織る鶴を居られた凶器で捌く。干し魚を作る太った女性は足から伸びる百足に気付かない。並ぶ情報を審美眼で選びピンセットで挟む政治家。魚の内臓を取らずに煮込んだ檸檬を暖める。煉瓦を食べる蟻にキリギリスが楽器の破片で殺人事件。目玉を地中海に埋めて眼鏡とサングラスを眼窟に埋めた。化粧室で白粉花と泥水のランチをする女と水に浸された喫煙所で煙をごぼごぼ食べる男。花に待てないと言えない声帯を外す。スイッチ一つで豚が鶏に負けて唾を蒔かれる。蔦をむしって紙に包めば髪飾り。中国の茶葉を渋いと食べる老婆とアルファベットを繰り返すラジオ放送。排気ガスに近付きすぎたガスマスクが逆さに吊るされた。

「飽きた」

美しかった。美しかった美しかった美しかった美しかった美しかった。花に口を付けると目が腐る。青いサファイアを口に敷き詰めた麒麟。踊り子が鮮やかに刺繍した布を膨らまして舞台で逆立つ。鈴の音を聴いて難聴になった神主や神馬を操りスピーカーで笑顔を振り撒く市長。

「飽きたんだ」

頬張った月の欠片がしゅわしゅわ融けていく様を顎に焼き付けた。飲んだ石に胃を破く。孕んだ赤子をモノクロで縫う夫婦。シルクハットの消防隊員と糸車を回した。携帯電話に草を捩じ込んだ枕を押し付けて窒息させる。辞書がストーブに炙られて山羊のご馳走へ変わった。

「連れていってくれよ」

懇願が無情に同情を撃てば拳銃が死ぬ。本の糸を切ったバラバラ死体から活字を剥がす。酒瓶の中にアルバムを詰めた。計量カップに毒茸を入れて食卓に出す。
鼻先に、咲く。

「なあ!」

最期に永遠と赤い花を与えてくれた△×を、「お」+れ=は殺すべきでは無かったのだ。
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