85 | ナノ
カノマリ

こつ、と当たった額と額。近いピンクの目がじっとこっちを見てくるのが今も少し慣れない。可愛い可愛いと大切にされた子供じゃない子供がこうして僕の部屋のベッドの上に居ると言う事実がどうにも現実味を帯びなくて、どこかまだ僕は夢を見ているんじゃないかとすら思えてくる。ふわふわした髪が肩から落ちて僕の肩にぱさりと引っ掛かった。
服の上から胸に触る。大きいかと言われると、お世辞にもそうとは言えない胸はそれでも柔らかい。どく、と首筋に響いた鼓動と手に伝わったその振動に思わず唇を噛んだ。ぺたりと小さな白い手が僕の頬を撫でて、マリーから軽いキスがされる。白い睫毛が下りていたのが、すうっと開けられた。覗くピンクは鮮やかに光っていてふと微笑んでしまう。胸から手を離し、抱き締めるように腰に腕を回した。白いエプロンの綺麗なリボン結びを解けばスカートに沿って広がっていたエプロンは途端にシワの色を濃くする。マリーが軽く腕を動かしただけでするする落ちる白がベッドのシーツと区別がつかない。エプロンの下にあった金の釦を一個ずつ外していけば、マリーは気まずそうな、居心地が悪そうな顔をしてそわそわし出す。それの原因が分かっているだけに、どうしても顔から笑みが除けられない。胸の上、鎖骨の窪みの下に軽く唇で触れれば、ふる、とマリーの肩が震えた。

「ブラは?」
「う......、は、外してきた......」

知ってるくせに言わんばかりの顔が、僕をキッと睨んでくる。それは服の上から触って分かっていたことだったが、こうして聞いてしまうのは僕の性格上仕方ないことだ。何もつけていない胸に服を避けて触れば、柔らかい感触が手のひらに伝わった。暖かい。
そう言えばと目を閉じているマリーに気付かれないようにスカートを捲った。あ、着てるんだね。何だか変態臭い確認をしていればべしっと額を叩かれた。

「な、な......っ」
「いや下もかなって」
「そ、そんな訳......!」

顔を真っ赤にしているマリーに照れ所が可笑しい気がして仕方ない。普通そういうのって胸触られたら辺でじゃないの。今にもやっぱり止めると言いそうなマリーを宥めるように軽くキスしてみた。うううっと唇の下で唸るマリーにくすくす笑いそうになるのを飲み込む。一度離して口を中途半端にぱかっと開ければ、マリーもそれに習って口を開いた。そのまま合わせれば、舌に舌が当たり、お互い舐め合うように動く。暫くすればマリーは、はふはふと一生懸命合間に息を吸い出す。何度しても呼吸が慣れないとむくれた顔で僕に溢したのがちょっと前のはずだけど、相変わらず慣れないらしい。それでも止める気になれず、そのままで胸を触り、スカートの中の白い太股を這った。肩に置かれていただけの手が服を掴み、それでも無理矢理止めさせないマリーが可愛くて堪らなくなる。
柔らかい女の子の感触が両手を通して興奮を煽り、脳が熱でどろどろになっていく。乳首を摘まむようにして撫でれば、少し苦しげだった呼吸の声が高くなった。ようやくキスを止めて離れれば、マリーがとろっとした赤い顔で僕を見詰める。いつの間にか腕が首に巻き付いて抱き付かれている形になっている為だろうか、マリーの息が近くてぞくぞくした。

「あ、っ......」

手を動かせば高い小さな声と震える顔。ショーツのゴムに指を引っ掻けて下ろし、濡れいるそこを指で撫でた。金の釦が光る服を開けて柔らかい肌に舌を滑らせる。背中でマリーの指が引っ掻くように動き、腰が反っていく。

「う、んっ...!」

びくびくと震える肩や内股が示す相手が気持ち良くなっているのだという事実に後頭部辺りがかあっと熱くなる。膝立ちのままのマリーをベッドに倒せば、少しホッとしたような顔が見えた。ちゅ、と首に吸い付けば、うーっと不満そうな声が聞こえてくる。跡をつけるなという意味ならもうすでに遅い、マリーが気付かないだけで何個かもうついている。
マリーに覆い被さっていた上体を起こし、マリーの脚を撫でながら持ち上げた。その感覚にもぴくぴくと脚が震え、マリーの顔が切なそうになる。持ち上げた足首が目に入って、何となく噛み付いてみた。ひえっと悲鳴が上がったが、構わずがぶがぶ噛み続ける。

「かのぉ......っ」
「ん、ごめんね」

くしゃっと歪んだ顔にパッと足首から口を離した。ちょっと痛かったかもなと思いながら噛んだそこを見れば、若干血が滲んでいてちょっと所では無かったのが分かる。ごめんねともう一回謝ればマリーの睨みが飛んできて、そして顔をふいっと反らされた。良かった、石にならなくて。流石にこの状況で石にさせられて放置されたらヤバかった。
誤魔化すように濡れたそこにまた指を這わせれば、反らされている顔が耐えるように目を強く閉じた。くち、と濡れた音が指の間から漏れてくる。

「ふっ、んん」

シーツの上に広がった白い髪の上、白い未熟な体が声を抑えて震えている。水色のスカートが腰骨の上まで捲られて、金の釦は開いて胸を隠すことが出来ていない。これを僕がしていると思うと痛いほどの頭痛のような乱暴な鼓動が響く。胸を触り、もう一方を舌で舐めた。下は濡れて指を動かせば音が耳朶に触れる。反らしていたことなんか忘れたのか、ただシーツを広がった自分の髪ごと掴んで声を上げるマリー。

「あ、あっ、ん...は」

ベルトを外して前を開ける。熱くて上着と上を纏めて脱いだ。散々視覚聴覚思考で煽られた性器ががちがちに起っている。それに持参したゴムの封を切って被せた。ぐいっとマリーの柔らかい太股を持って両足を折らせる。マリーの所を少し指で開いてそこに起った僕の物を当てた。マリーの顔を見れば伏せられたピンクの目が僕を伺っている。それに許された気がしてぐっと僕のをゆっくり押し入れ始めた。マリーが息を詰めそうになるのを我慢して懸命に息をはあっと吐いていくのを見詰める。ゴムの袋をぐしゃりと握り潰してベッドに置いた。

「苦しい?」
「ふっ、ちょっと......」

処女の頃は痛がってたなとぼんやり思い出す。途中で止めてあげたくなった状況を思い出して今の状況をはたと見詰めた。ずいぶん作り替えられ淫らになった光景だ。マリーの腰を掴んで思わず少し動いてしまってマリーが無言で訴えてくる。その差についとか言ったら怒られそうだな。

「ん、大丈夫......」
「もうちょっと頑張って」
「そういうこと言わないでよぉ......あっ」

へにゃ、と萎んだ顔の額にキスを落として動く。湿った暖かい中がひたりと包んでくる。ぐっと奥に入れればぞわぞわ体内で這うような気持ち良さが届く。

「あっあっ、ふぁ...っ」

ジュク、と動く度に音がする。もう視覚にも聴覚にも毒な空間がごとんごとんと心臓を揺らして脳をひりひりさせる。マリーが腕を伸ばして抱き付いてくると動きにくくなるが、体温と柔らかさが手離し難くて何も言えない。腰を掴んでいた手を膝の裏に持っていった。

「うあ、かの、ひっカノ」
「マリー......っ」

呼ぶ声が可愛い。呼び返せば甘えるように肩に擦り寄られてぎちっと奥歯を噛んだ。本当に、可愛い。


ベッドに座って座布団の上に座わるマリーの長く白い髪をドライヤーで乾かす。眠そうにうとうとと船を漕いでいたマリーがいよいよ僕の太股で頭を支えて寝出しそうになるのをドライヤーを止めてがしがしとタオルで少し乱暴に拭いて起こした。ふあっと間抜けな悲鳴に笑い、ドライヤーをコンセントから抜いて機体にぐるぐると巻く。これをすると断線しやすいと言うが、もう五年もここにあるから慣れでそうしてしまう。それにそろそろ買い換えたいとか女子全員で言ってたからそこそこ乱暴に扱っても許されるはずだ。

「自分の部屋帰らない気?」
「うーん......」
「それはどっちの意味の返事なのさ」

ふわふわの髪を撫でれば、マリーはくたりと力無いままだ。これはこの部屋で泊まるコースだなと勝手に決めて取り替えたシーツのベッドの上にマリーを抱えて座った。腕の中で寝そうで寝ないマリーが僕の胸に頭をこてりと落とす。ムカつくけど可愛いなあ。むにむにと頬を触ってちょっかいを出せば、不機嫌そうに目が開かれた。眠さでとろんと飴が固まる前のような目が僕をじっと見て、不意に首に腕を伸ばして抱き付いてきた。そのままぼすんと体重が傾くままにベッドに倒れれば、マリーが猫のように擦り寄ってくる。

「マリーくすぐったい」
「ん〜、ふふ〜」

どうやら不機嫌そうだったのは一瞬だけで、今はもうご機嫌らしい。にこにこと口を緩めて抱き付いてくるマリーを引き剥がす気なんかなれず、このまま寝ようかと床に落としていた毛布を僕らの上に掛けた。電気スタンドの電気をかちんと消して、マリーの背中を叩く。

「ん......、なに」
「何でも」

もぞもぞ動いていたマリーが少し起き上がり、僕の顔をぺたりと触った後軽くキスしてまた僕の上に寝そべった。そしてまたキスされる。暗い中で何度もされる行為に何となくズルいと思いながらそれを受け入れた。眠そうだったのは何だったのか。

「好きよ」
「好きだよ」

言えたことに満足したようにマリーは小さく笑った後こてんと直ぐに眠る。まさかさっきの寝惚けてたんじゃあるまいなと思うほどの早さに苦笑しながらメデューサの特性に夜目が無いことを祈った。暗い中で赤く光る目なんて、使えるはず無い。
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