5 | ナノ
コノカノ

コノハはキスが好きだ。
隙あらばする。

ぎゅうと握られた手は恋人繋ぎで、至るところにされるキスは多すぎる。瞼の上に一つ落とし、コノハは一回離れた。目を開く。
幸せそうな顔。嬉しくて堪らないって顔。愛しくて楽しいって顔。そんな顔が視界一杯に広がって、結局文句を言おうにも言えなくなる。
また負けた。勝負事では全く無いが、気持ち的な問題だ。
またキスをしてくるコノハに、ぼうっと思う。
下手くそ。
というか、やり方を知らない。触れるだけの幼稚なキス。それをずーっと繰り返す。
また、ちゅっと一回だけ触れるキス。こんなデカイ青年に可愛らしさを求めて居なかった僕は複雑な気分で可愛いなあと思ってしまう。
しかし、可愛さよりも何よりも、僕だってコノハだって男だ。さすがに付き合って一ヶ月以上こんな触れるだけの可愛らしいキスで我慢できるほど僕も大人じゃない。
罪悪感に似た緊張感を抱えながら、コノハと繋いだ手を下に引っ張った。不意の事でコノハががくんとしゃがむ。ごめんと心の中で謝りながら僕はコノハにキスをした。
僕からする事はあまり無いのでコノハが少し目を見開く。それにどくっと心臓が脈打ったが、気付かない振りをして舌を入れた。コノハの肩が大袈裟なほど揺れる。
舌を絡ませようとしたが驚いたコノハが舌を出さない。それに少し笑いかけた。本当に子供みたいだ。
一旦口を離して固まっているコノハに舌を出す。あっかんべーをする僕にコノハも恐る恐る舌を出した。可愛いよな、ホント。

「鼻で息ね」

そう言ってキスをする。やはりぎこちないコノハ。舌を絡ませればその度にどうしたらと目を開けて震えている。子供にイケナイ事教えているような気分だ。それでも止める気は全く無かった。

「ぷはっ......ちょ、っかの、!」
「ん、もっかい」
「え?んむっ」

何か言おうとしたコノハの口を強引に塞ぐ。苦しいのか涙目になっているコノハにざわざわしたものを首の裏に感じた。
しかし二回目ともなればコノハも少し慣れたのか、同じように舌を絡ませてくる。ぎこちないけど。
それに悪戯心がむわっと出てくる。
べろ、っと唇を舐めて触れるだけのキスをして離れれば、少し不満そうな目とかち合う。ぞくぞくする。

「気持ち良かったでしょ?」

わざと問えば、コノハが言葉に詰まる。恋人繋ぎの手を指の間を撫でるようにまた組み直す。それが悪かったのか、コノハが拗ねたように顔をしかめた。あ、やばい。

「うん、だから、」

もう一回。
ちゅ、と触れるだけのキスを何度かされ、舌を入れられる。くちゅ、と絡み合う音が耳に届いて居たたまれない。
吸われたり上顎を撫でられたりと、教えてないことまでされる。恐らく僕の反応を見てやっているんだろう、応用も出来る優秀な生徒さんですねちくしょう。

「ん、......ふぅっ、むー......んん!」

息も食べられるようなキスに耐えられず繋いだ手を離そうとすれば、拒否を示すように舌を甘く噛まれ、もっと強く繋がれた。びりっと電気が背筋に走る。
ホントにやばい。

「ふ、はっ......、コノハっ......!」
「は、......」

どうにか名前を呼べば、コノハは一旦離れた。それに安心して呼吸を落ち着かせる。コノハも若干息を乱していたが、僕ほどじゃなかった。それにイラつくが自分が蒔いた種だ。自業自得。

「あ、ごめん」
「......良いよ、僕のせいだし」

自分がしたことに気付いたのか、コノハはわたわたと謝ってきた。手をぎゅうとまた繋がれる。さっきの電気を思い出して顔に熱が上ってつい顔を反らす。欺けば良いのに、コノハには上手く出来ない。
しかし顔を反らしたためか許されてないと思っているコノハは更に焦る。しょぼんとしている雰囲気がなんとなく伝わった。

「ごめんねカノ」

髪にキスをされ、仕方なく顔を上げる。顔が赤いと自覚しているから、少し俯いてはいるが。
顔を上げたことによって、また最初のようなキスを顔中にされる。瞼に、額に、頬に、口に。さっきのキスのせいか、幼稚というより優しいと感じた。
いい加減こそばくなって笑って止めた。ホッと安心した顔が僕を優しく見る。

「カノ」

コノハが僕の名前を呼びながら近づいてくるのを、目を閉じて答える。
とことん僕はコノハのキスに弱いんだと気付いて、笑えた。
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