14 | ナノ
セトシン

ムラムラする。
かちっと歯を噛んで思う。仕方ないだろ男なんだよとか言い訳をしながら。
ムラムラする。
最近放浪癖を発揮し、セトは行方不明中。連絡は取れるがハッキリとどこに居るかを示さない。昔は心配したが無事帰ってくるはずだからと諦めたんだとキドさんが溢していた。
誰も居ないアジト。他は全員でデパート。俺は進んで留守番。当たり前だ、こんな気持ちでうろちょろできない。
はあ、とため息を付く。
いっそ自慰でもしてようかと思うが人の家で流石に、と常識が働く。モモみたいな馬鹿だったら良かった。
ぎゅう、と眉間にしわが寄る。
最高に最低だ。受け入れるのが慣れたら次は欲情か。ビッチかよ。あーあー、犯されたいとか最悪。
がたがた椅子が音を立てる。いつの間にか貧乏揺すりをしていた。
ムラムラする。
またため息を付こうとすれば、メールの受信音がポケットから響く。

「そろそろ帰る、ね。はいはい了解りょーかーい」

キドさんの簡潔なメール。絵文字も顔文字もない。それに向こうに聞こえるわけがないのに返事をした。そうすれば気分でも変わるかと思ったんだが、依然ムラムラ。
まあ、ですよねー。
自分に乾いた笑いを送っているとがちゃんとドアの開く音がした。キドさんだろうな。俺を呼ぶモモの声が聞こえて、カノさんが荷物全部持って入ってくる。そう思ったん、だが。

「ただいまー」

入ってきたのが緑のツナギ着た男とかちょっと待とうぜ。
全体的にぼろっとした感じのセトがきょろっと周りを見て俺を見付ける。それでにっこり笑うんだからムラァと来ても可笑しくない。普通だ。

「ただいまシンタロー」
「......おかえり」

抱き締めないで。こら、止めなさい。誰も居ないとこうやって抱き締めてくるのは恒例だが、ちょっと今は待とうとストップを掛けたい。
しばらく迷って腕を回せば、更に抱き締められた。セトの匂いが今は辛い。流石に帰ってきて早速とかどんだけだよ無理無理。
とか、思って、耐えてん、のにっ......!
こっちの気持ちお構い無しで腰触ったり頬撫でたりキスしたり。なにもされてないけど起つぞ!

「セト、離れろ......」
「久しぶりなんスよ?もうちょっと」

ムラムラムラムラ。
俺ってこんな性に強欲だったっけとか自分を見直したくなるほど欲情しまくってんのにそれをまあべたべたべたべたと。
頭のどっかでぶつーんと何か切れる。理性なのか常識なのか堪忍袋の緒なのか。まあ見事に切れた訳で。

「シンタロー?」

不思議そうな顔をするセトの手を引っ張ってセトの部屋に入る。そしてセトをベッドに座らせて適当な紙に立ち入り禁止とでかでかと書いて部屋のドアに貼り付けた。俺こんな素早かったの初めてかも。
一連の行動をぽかーんと見るセトに近付いて肩を掴む。にっこり笑顔付きで。

「シンタ、うわ!」

そして油断しているセトを思いっきり押し倒した。え?え?と意味もなくきょろきょろするセト。
もういっか。どっかで声がする。
セトの上に乗ってジャージを脱いで床に投げ落とした。Tシャツも同様に落とす。
ぽかーんと呆けているセトの頬に手を置いて笑う。

「ヤりたい」

ビッチとか呼ばれても良い。兎に角ヤりたいんだよ俺は。
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