152 | ナノ
セトシン

 デートと俗に言われるほど色っぽくも甘くもなく、ただ二人でデパートに行き、頼まれたものなどを買っただけ。それほど量は多くなく、素早く終わった買い物にどうせなら昼食でもしようかとどちらからともなく提案が出た。何一つ、不自然な流れは無かったはずだ。
 食べ終わったセトはテーブルの向かいで水を飲んでいて、シンタローは遅く運ばれた料理を味わっていた。他愛のない会話もしたし、これといってセトの何かを煽ることは言った覚えはない。覚えはない、のだが。
 かしゃんっとフォークが皿の上に落ち、甲高い音を立てる。シンタローは先ほどまで握っていた銀色をもう一度取ろうとはせず、信じられないものを見るような目で向かいのセトを見ていた。セトはそんなシンタローの視線を受け流し、メニューを捲る。
「飲み物は、と……」
「……っ」
 シンタローはセトになにか訴えようとして口を開いたが、咄嗟に息を飲んで耐えた。いつもなら目敏くシンタローの状態に気付き心配するセトも、今回はシンタローをまるで心配しない。というのも、セトがその原因だから。
「お、ま…っ」
「…どうしたんすか、フォーク落ちましたよ?」
「っ…ん」
 セトはやっと気付いたと言わんばかりにシンタローの料理の上に乗っているフォークに手を伸ばした。
「あ、一口欲しかったんすよね、貰っていいっすか?」
「ふ…んんっ、ぁ」
 シンタローはセトの言葉には答えず、テーブルに腕をついて顔を俯かせる。その時肘に当たった皿が、かしょんと音を立てて動いた。
 びくりと肩を震わせ、耳を真っ赤に染めて耐える。すぐにでもテーブルに突っ伏しそうなシンタローを、セトは目を細めて眺めた。
「シンタローさん、そういえば飲み物どうしましょうか」
「あ…や、め…っ」
 シンタローの皿を引き寄せ、勝手に食べ始めながらセトは尋ねる。メニューをシンタローの前に差し出し、それを一緒に見るために覗き込むように顔を寄せ、小さく囁いた。
「…離さないのはシンタローさんなのに?」
「っ〜〜!」
 かっ、と赤くなった顔。涙を浮かべ、震えながら睨んで来るシンタローにうっそりと笑む。
 テーブルの下、シンタローは必死に足を閉じていた。かくりと震える膝を擦り合わせようとしている足。だが、それは間に入り込んだセトの足が邪魔をしていた。
 ズボン越しに性器を擦る足。下から上へ、上から下へ、竿を撫でて刺激する。
 まるでセトの足を支えるかのように閉じたシンタローの足だが、そうではない。突然のこのテーブル下の行為に驚き、足を閉じただけだ。そして確実に与えられる快楽にただ耐えているだけ。断じて離さないのではない。むしろ離したところでセトの足が離れなければどっちにしろ同じこと、動きが制限される分、こちらの方がマシではある。だが、まるでシンタローから離さないと支えているかのように見えるのも事実で。
 考えないようにしていたことを的確に言われ、シンタローの足の力が若干緩む。だがまた動き出したセトの足に、耐えるための力が入る。
 親指で亀頭の下のくびれを押され、そのままぐりぐりと押し付けられ、シンタローはびくびくっと大きく震えた。
「ふっ、っ、ふは……」
 まだ暖房をつけている店内はシンタローにとっては暑すぎた。じわりと滲む汗、吐き出す息も熱を孕んでいる。吐き出しても冷めない熱は、じりじりと頭を茹で、視界をぼんやりと霞ませていく。
 完全に勃ち上がり固くなった性器は、下着の中でこぷりと先走りを吐き出した。ぬちゅ、と粘る水音が立ち、シンタローを引き戻す。
 外、だ。いつばれてもおかしくない、人のいる。
 一番奥とはいえ誰が来るかも分からない。ただのテーブルでは、横から見れば何をしているかは一目瞭然だろう。
 一気に覚める頭、反してますます増していく体内の熱。
「セトっ、やめろ……!」
「やめて、どうするんすか?」
「は、っあ」
 やめて、やめてどうするか。
 処理するにしても店内にトイレはない。そもそも勃っている性器をそのままに立ち上がる勇気はなく、誤魔化せるかと言われるとかなり怪しい。収まるまで待つ手もあるが、最近ご無沙汰で耐えれる気力はあまりない。だからといってこのまま出してしまうわけには。
「あっや、そこ……っ」
 八方塞がりで思わず言い返せなかったシンタローに、セトは亀頭を撫でさすられた。弱いそこを刺激され、否応無しに高められる。
「だっ、……も、ぅ!」
「かわい……」
 セトはぼそりと呟き、ぐにぐにと動きを大きくした。扱くように撫で、指で押す。下着に誤魔化しようのない先走りがぐちゃりと染み入り、性器に張り付いている。
「ふっっ、ん、あ……!」
 びくんっとシンタローは大きく跳ねた。肩を抱き、テーブルに突っ伏して縮こまって、セトの足を更に挟み込んで吐精する。
 噛み殺した声は、喉の奥から絞り出されて少し漏れていた。足はぐちゃぐちゃな下着の立てる音を楽しんでいるかのようにまだ動く。
 ぐちゅ、ぬちゅ、とテーブルを隔てて聞こえる音。そしてそんな動きにさえ、果てた敏感な体は反応する。
「あ……んぅ、はっ」
 早くも緩く勃ってきた性器。シンタローはセトを睨むことも罵倒することも出来ずに腕に頭を擦り付ける。
「イッた、ばっかぁ……」
「じゃあもう一回」
 もう一回。かた、と力が抜けたシンタローの足が震え、動きの制限がなくなったセトの足は今度はもっといやらしく動き出した。
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