120 | ナノ
セトシン

珍しく特に渋られず部屋に来てもらえ、これまた珍しくなんの言葉もなくベッドに押し倒させてもらえた。なんとなくそういう気分で、なんとなくお互いそうで、なんとなく。
ベッドのスプリングが軋み、それだけで落ち着かない。目を閉じて深く息を吐いているシンタローさんを見下ろして、目が開くのを待つ。うっすら開いた目はすぐに顔ごと逸らされ、早くしろと促された。
二の腕を掴むと顔が戻ってくる。なにしてんのと聞いてくるシンタローさんの顔がびくっと変わった。
袖のなかに入り、すうっと二の腕を指先だけで撫でる。ぞぞっと肌が粟立っているのが分かり、そのまま手まで撫でると指がぐっとシーツに爪を立てて震えていた。

「お、い」

震えた手がべちっと俺の手を叩いてくる。ぎろっと睨んでくる目に申し訳なさそうに笑えばもっと睨まれた。
今度は裾から手を入れて腹を撫でる。薄っぺらい、とぼんやり呟けばうぐっと詰まった声が聞こえた。
胸まで手が動くと分かりやすく体を固くする。そこまで敏感じゃないにしても、感じるという事実は痛いらしい。指を押し付けるように触るとシンタローさんは少し泣きそうな顔をする。本人は今でも気付いていない。服を捲ろうとするとがっと手首を掴まれる。

「や、っぱ、バック」
「俺このままがいいっす」
「オレがいやだ」
「はいはい、じゃあいつも通りじゃんけん」

手を服から出して握る。最初はグー、と声もなくじゃんけんをし出す。毎回毎回なにをしているんだろうと馬鹿馬鹿しさを感じてしまう。
あいこ二回、シンタローさんグーでパーの俺の勝ち。忌々しそうに自分の出した手を見るシンタローさんに断りもなく続行した。

「最悪」
「......そういうの言わないでほしいんすけど」
「うるさい発情犬」
「だからー!」

両腕で顔を覆うシンタローさんに反論するが聞き届けられず、ぶつぶつとああ最悪なんでだと愚痴が流れる。
ちょっとムッとしてズボンに手を突っ込んだ。腕の間でシンタローさんが目をぎょっと見開く。

「シンタローさん替えの下着ないんすから汚しちゃダメっすよ」
「うわもう死ね!ふざけんな、クソ野郎......っ」

下着の上から撫でるとシンタローさんの声が切羽詰まっていく。それだけでムラムラと欲求不満が音を立てた。
そもそも俺がシンタローさんが来る日を予知したがごとくバイトを入れたのが悪い。長く会えずに欲求不満がどんどん高じていったのだ。

「ほんとっ、死ねばいい......!」

喘ぎたくないのになぜ口を開くのか、たぶん黙ってられないなにかがあるのだろう。黙ってほしいと言えない俺も俺だ。
下着の布越しに擦ると溜まってたのかすぐに起ってくる。エネさんがいるから通常通りとも言えるが。
徐々にシンタローさんの息が荒くなっていく。威嚇している猫のようなそれに笑いたいけど笑えない。

「ぅ、んっ......?!きゅっうに、なんだ」

ズボンと一緒に脱がして直で触るとびくんっとシンタローさんが反応する。すいません俺が我慢できません、なんて言うことも煩わしくて腰を押し付けると、腕の間でシンタローさんは顔を少しひきつらせた。

「なんでお前は、オレで起つのか、っ全然わかんねぇ......」
「失礼っすね。好きな人で起ってるんすから普通っすよ」
「だっから、はっ」

先をぐりっと擦るとびくびくっと震える腹。声を抑えることに集中し出していく。余った片手で足を撫でると横腹に膝がぐっと押し付けられた、蹴ったつもりらしかった。横腹に足の震えががくがくと伝わる。

「ふっ、ぅ」
「噛んだら腕縛るっすからね......」
「わっか、てる!」

ぐち、と音が立つ。先から出てくる滑る液で全体を擦ると、眉がくっと下がっていく。身悶えるようにシンタローさんの首の後ろが浮き、息の感覚が浅くなった。
足を撫でていた手を胸に上らせ、触る。ぐりっと捏ねるように摘まみ、追い立てる。

「っ、ん......っ!」
「シンタローさん」

膝がどんどんめり込んできていて痛い。
触るだけ水音が増えて、足が痺れている。浅くて早い呼吸が一瞬ヒュッと詰まり、シンタローさんが目をぎゅっと強く閉じる。

「はっあっ、んんっ......っ、っ!」

どろ、と出てきた白濁が手にかかる。深く息を整えるシンタローさんの力の入っていない腕を取って引き剥がす。噛んでいないことにホッとしながらまじまじと顔を見るとべちっと手のひらが飛んできた。

「みんな......」

弱々しく命令されて一応視線を外すが、視界の端に写り込んでくるから仕方ない。
置いてあったティッシュを何枚か取って手を拭き、ローションを取る。もう反応する気が起きないようで、シンタローさんはぼんやりと俺を見ている。手のひらに出すと、ぬるりと指の間からシーツに数滴落ちた。そして穴の周りに塗り込むように触れば、シンタローさんはようやく顔をしかめた。あまり気持ちいいものじゃない、と苦々しい顔が語っている。
そしてぬくっと指を一本入れれば、シンタローさんは顔を逸らして息を吐いた。俺を見ないで、じっとなにもない方を見詰める。

「痛くないんすね」
「......最初っから、一本だったら痛くなかった、し」
「にしてはすごい顔してたっすよね......」
「それは普通に気持ち悪かった」
「そっすかー」

ぐにぐにと動かしてみるが、不快感以外はないようだった。うーうーと今にも唸りそうなシンタローさんに、とりあえず慣らして拡げることに集中する。ぐちゅ、と指を動かす度にローションの音が聞こえる。
指を増やせばさすがに不快さが誤魔化せないのか眉間にシワがよってきた。萎えたままなのも申し訳なくなってくる。
前立腺を探すように指を動かせば、シンタローさんの膝が横腹にまた強く押し付けられた。

「余計なことすんな......」
「珍しいっすね、急かすなんて」

いつも波が去るのを待つようにされるがままなのに。
お言葉に甘えて指をまた増やす。三本の指にさすがにシンタローさんの顔も苦しそう歪められ、体が強張った。
ローションを足して中に塗り込んだり拡げるためにしばらく動かしたりすれば、徐々に慣れてきたのか強張った体から力が抜けていく。

「大丈夫そうっすね......」
「......バックに」
「しないっすからね。シンタローさん、見えないのをいいことに噛んだり爪立てたりするんすから」

やっと諦めたのか、起き上がりかけていた体をぼふっとベッドに倒す。いつもいつも往生際が悪いと呆れながら、腰の下に枕を敷かせた。
ツナギのチャックをジジッと下げる。熱くて途中何度も脱ごうかと思ったが急いたせいでタイミングを逃していた。起ったままのを出して、宛がう。
割り開くようにぐっと入れる。

「っ、ん」

ぐっと奥歯を噛む。乱暴にしたい気持ちがぐらりと起きるが、それをやり過ごして進める。
ふとシンタローさんがまた腕で顔を覆っているのに気付く。ぐいっと腕を俺の肩に引っ張る。意図が分かったらしく、シンタローさんはなんとも言えない顔でいたが、腕を元に戻さなかった。
ずずっと入っていくと、肩の下辺りがざわざわとする。

「でかい......っ」
「えっと、は......、誉めてるっすか......?」
「アホかっ!」

素直に思ったことを言えば肩に思いっきり爪を立てられた。シンタローさんは平均ですよ、なんて言った日には風呂に入れないほど爪で抉られたので黙って進める。
ようやく全部を入れると、久しぶりの感覚がぞわぞわと背筋に通っていく。落ち着くように息をつけば、思ったより息が熱くて興奮を自覚した。

「シンタローさん、やばい、きもちいっす......」
「お前ちょっと黙れ」
「黙るんで動いていいっすか」
「ああもう勝手にしろよ!」

できれば声を張らないでほしい、振動が。
シンタローさんの許可も得てゆっくりと動く。ローションを足したためかいつもよりぬるぬるしていた。
汗がシンタローさんの服に落ちる。キツさが緩んだくらいで前立腺を探す。そこでふとなにかに気付いて下を見た。

「シンタローさ、ん?」
「なに、はっ、おいっ!」
「前立腺突いてないっすけど、ちょっと起って......」

触ると萎えていたそれは少し起っている。指摘すれば肩を強く引っ掛かれ口を閉じたが、わなわな震えるシンタローさんに答えをもらっているようなもので。
試しに動いてみるとシンタローさんの足が揺れた。

「うるさい」
「......」
「うるせえ!」
「なにも喋ってないっすよ?!」

肩から手を離し、顔を覆うシンタローさんに俺も顔を覆いたくなる。かああっと顔が熱くなっていく。

「前立腺じゃなくても、中気持ちいんすね......」
「死ね!」

なぜか俺も照れてきてシンタローさんが顔を見てなくてよかったと心底安堵する。それじゃ答えだと気付いているのだろうか。本当に色々最強だと思う。
しかしこのまま動いていいのか迷う。動いてしまいたいけれど勝手に動いていいものかとそわそわする。
落ち着くために深呼吸を数度行い、シンタローさんの腕を緩く掴む。それだけで顔から手が離れた。

「えっと、動いていいっすか」
「......死ね」
「あはは、それは追い追い」

苦笑いで流して動く。ずる、とぎりぎりまで引き抜いて、入れるを繰り返す。前立腺を突けばがくっと足が折れるのが分かった。色んな興奮がまぜこぜになって襲ってくるのを感じ、熱くて溶けそうな脳がびりびりした。

「ぁっ、ん......」
「もっ、うっ、はっ......んんっ!」
「っは、そーろー......」

それ、シンタローさんに言われたくない。
さっき以上に声を漏らさないシンタローさんに倒れ込むようにのし掛かる。奥まで入れて吐き出すと、シンタローさんのからかうような声が耳朶に触った。
射精後のダルさを感じながらシンタローさんを抱き締める。

「シンタローさん、もっかい」
「......」
「あー、シンタローさんイってなかったっすね」
「もう、黙れ」

ぼそぼそした泣きそうな声が小さく吐き捨てた。肩がぴりぴりとさっきから痛んでいる。
どうにももう一回で終わりそうにないなと思いながらシンタローさんを離した。実際泣いていたシンタローさんに内心で謝っておいた。
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